護衛の護衛 20
「それは聞き捨てならないな」
バーナードは声を低くする。
「よく考えろ。寝る前に風呂に入っても寝てる時にまた汗かくだろ。その汗かいて臭い状態で人に会う方が汚いだろ。特に俺たちは身分が高い方に会う事が多いからな」
確かに、特別な人に会う前には汗を流したいものだよな。臭いで変な印象を与えたくない。
「けど、寝る前に入らないって事は汚いままで布団に入るって事だろ」
まだゼイリスは突っかかってくる。朝風呂の何が気に食わないんだろう?
「だから、汗をかいた時は入る」
「じゃ、汗をかかなかったと思った時ははいらねーって事だろ? お前の姉ちゃんもそうなのか?」
「ああそうだが。それがどうした?」
「まじか、幻滅だな。お前の姉ちゃん、そこそこ綺麗だと思ってたのに」
「おいおい、風呂に入って無い訳じゃない。家では朝に入るだけだ。特に女性は風呂入ったあと髪を乾かすのが時間かかるだろ。早起きしてそれから入った方が髪を乾かして寝る必要が無いから合理的だろう。それに、お前だってさっきもだけど、起きてすぐは寝癖が酷いだろ。朝、風呂に入ったら寝癖なんか1発だ。合理的だろう。時間を有効に使える」
逆にバーナードには朝風呂に強い思い入れがあるみたいだ。
なんで、男と風呂に入りながら、朝風呂の是非について聞かせられにゃあかんのだ。この2人、まるで女子みたいな奴らだな。僕なんて冒険とかで丸々1週間着た切り雀なんて良くある事なのに。
ゼイリスが僕を見る。
「で、オッサンはどっちなんだ? 夜風呂なのか? 朝風呂なのか?」
「平和な奴らだな。風呂? 入れるだけ幸せだろ。ダンジョンに潜ったりしたら、帰るまで風呂どころか体も拭けないってのはあるあるだ」
まあ、もっとも僕は収納スキルのお陰でどこでもシャワーが可能だけど。
「まじか」
ゼイリスの目が見開かれる。
「で、オッサン、どこそこ痒くなったりしねーのか?」
「痒いくらいで人間死なん」
「臭くないのか?」
「臭いだろうな。けど、自分の臭いのは自分じゃ匂わない」
「そっか、冒険者って大変なんだな」
ゼイリス、お前も冒険者だろ! ってツッコミたくなるのを押さえる。
「ザザさん、冒険者は風呂に入れない事も有るってのはわかった」
バーナードが口を開く。
「それで、さっきの朝風呂の事はどう思うんだ?」
また蒸し返してきたな。
「そうだな。俺は夜入って、朝素振りして、水浴びしてる。要は両方だな」
「両方か、やっぱザザさんは贅沢だな」
なんか、バーナードの言葉はモヤモヤしてるな。
「まあ、要は、好きにすればいいんじゃないか?」
「そうだな」
バーナードは納得したみたいだ。
「ああ」
ゼイリスもだ。
けど、朝、夜、どっちで入浴するかは一長一短だな。優劣に答えは出ないだろう。あと、両方は、風呂の入りすぎは肌に悪いって、家の導師が言ってたな。
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「秘めたるスキルで異世界転生」です。弱そうで実は強いって主人公の話です。よろしくお願いします。下のリンクから飛べます。
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