護衛の護衛 17
「オッサン、いやザザさん」
メイが言い直す。彼女の中で、少し僕の位階が上がったようだな。
「なんだ?」
「さっきの話よ」
あ、飯代の事か。
「少しは頭を使え。俺とお前たちの違いだよ」
「年齢?」
即座にアイリスが答える。
「違うわ!」
頭をはたいてやりたくなるのを我慢する。さすがに貴族の女子をどついちゃダメだよな。
「たしか、俺は」
ゼイリスが頭をかく。さっきの事も覚えてないのか?
「『飯くれ』って言って、オッサンは、『こんばんは、飯くれ』って言ったよな。何か違うか?」
「んー、鈍いな。寝る時間が無いから答え合わせだ。それだよ。お前ら誰として挨拶しなかっただろ」
「えっ、それだけなのか?」
バーナードが怪訝そうな顔をする。
「お前らがどう思ってるは知らんが挨拶は大事だ。お前らだって知らん奴にいきなり飯をくれって言われたら、『はあーっ?』てなるだろ」
「けど、あのオッサンは飯屋だろ」
バーナードはまだ分かんないみたいだな。
「ここじゃ宿とった奴は飯が安くなる。まあ、宿泊して貰ったら宿は儲かるからな。だが、馬小屋は別だ儲からんからな。だから馬小屋に泊まってる奴の飯が安くなるかどうかは、あのマスター次第だ。挨拶も出来ないような奴の飯を安くする道理は無いだろ」
「ぐっ」
バーナードは言葉に詰まる。
「別に俺達冒険者はどこそこ愛想振りまく必要は無いが、最低限のマナーが無いと損する事が多くなるって事だ。だから馬小屋なんだよ」
「どういう事だ?」
ゼイリスが睨んでくる。
「お前らが頼み込んだら、依頼人が納屋かどっかにかは泊めてくれたはずだ。どこでも馬小屋よりマシだ。お前らが馬小屋に泊まるのは、お前らの価値が馬小屋程度しか無いって事だ」
「やんのか! オッサン!」
ゼイリスが立ち上がる。
「よせよせ、別に責めてる訳じゃない。次に生かせ。次はもっと頭使えばいいだけだ」
「そうだな。よせ、ゼイリス。ザザさんありがとう。勉強になった」
「んだよ。俺はオッサンを認めないからな」
ゼイリスは音を立てて立ち上がると食堂を後にした。若いなー。子供が八つ当たりしてるみたいだ。
「ねぇねぇ、なんか甘いものないのー?」
アイリスが僕に絡んでくる。
「知るか。マスターに聞いてみろ」
「蜂蜜酒くれぇしかねーが、オメーらにはまだはえーよ」
カウンターから胴間声が飛んでくる。マスターもなんだかんだで女の子には甘いな。カウンターにラフランスが二個置いてある。
「幾らだ?」
「おまけだ。旦那、次は馬小屋じゃなくて、部屋とってくれよ」
んー、なんかマスターには僕の事バレてそうだな。
新作始めました。
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