護衛の護衛 10
「そんなに警戒する必要は無いよ。自由騎士を知らないのかな? 自由騎士が仕えるのは国じゃなくて正義だ」
パンさんは馬から降り、ランスと盾を馬に引っ掛け丸腰で彼らの前に立つ。噂に聞く自由騎士。始めて見た。彼の情報網は凄いらしいからな。僕らの事は避けてるんだろう。
「で、その自由騎士が俺らに何の用だ」
ゼイリスが武器に手をかけて口を開く。他の3人もすぐに武器を抜けるようにしてる。
「いや、君たちの旅の安全を祈ってあげようかなって思ってね。旅って物騒でしょ。魔物に遭遇する事もあれば野盗に襲われる事もある。そうだね。君たちの全財産の5%で、君らの安全を私が祈ってあげるよ。若い身空でこんなとこに屍をさらしたくは無いよねー」
ゆっくりと優しく自由騎士は話す。
バシッ!
バーナードが手を打ち当てる。
「クソっ。金を払わないとここを通さねーって事か。通行税をよこせって事か?」
「そんな事は言ってないよ。お金を払ったら安全を祈ってあげるって言ってるんだよ。強制ではないよ。誠意の問題だ」
「クソっ。一緒だろが。みんなどうするよ」
バーナードは言葉を吐き捨てる。平地での騎士は強い。ランスでのヒットアンドアウェイで無双を誇る。それに遠距離からエルフの弓での支援も入れば鬼に金棒だ。バーナード達は座学は優秀なはず。だから悩む。もし戦うなら丸腰の自由騎士に魔法を叩き込むがベストだけど、貴族の誇りがそれを許さないだろう。どういう答えを出すか見物だな。
「私は、脅しには屈しないわ!」
メイが声を張りあげる。
「そうだな。お前の祈りなんかいらねーよ。やるならやってやる」
ゼイリスは剣を抜く。
「しょうがねー。やるだけやってダメそうだったら、全財産くれてやるよ」
バーナードも構える。
「私は嫌よ。祈りって、全財産じゃなくて、報酬の10%でいいかしら?」
アイリスはそう言うと、ポケットから銀貨1枚を出す。それに無防備でツカツカ近づく自由騎士。
「はい、ありがとうございます」
自由騎士パンはアイリスから銀貨を受け取ると、手を合わせる。
「あなたの旅路に幸運が訪れますように」
パンは祈ると、警戒してる3人を尻目に馬に乗りエルフと一緒に王都の方に駆けて行った。3人は走り去るパンをずっと見ている。パンが踵を返して突撃してくるかもとでも思ってるのか?
パンの馬影は地平線に消える。
「助かったのか?」
ゼイリスが口を開く。もう自由騎士は影も見えない。
「あいつ、何だったんだ?」
バーナードは糸が切れたマリオットみたいに地面崩れ座る。
そろそろ種明かししてやるか。
「良くやったぞ、お前たち。アイリス以外」
「えっ、どういう事?」
アイリスが僕の裾を引っ張る。
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