護衛の護衛 2
「いいのかよ、多分、うちらが最後だぞ。オッサン今日はボウズでいいのかよ」
少女が声を張る。確かに働きそうな冒険者はあらかた出て行った。この娘は大声を出せばなんでも通ると思ってるのだろう。ちなみにボウズとは、仕事にありつけなかったと言う意味の冒険者の隠語だ。
「かまわんよ。明日頑張ればいいし」
もう少しおちょくらせて貰おう。まさか荷物持ち風情が仕事をえり好みするのかとか思ってるのだろう。そりゃ、するさ荷物持ちは奴隷では無いんだから。
「なあ、オッサン、明日やろうは馬鹿やろうって言うだろ。うちらの仕事は一泊二日。そいでなんと金貨一枚。明日ここに戻って来た時には、オッサンのうっすい財布には金貨一枚入っているって事だよ」
仕事受けないって言ってるのに、報酬説明まで始めやがった。言葉通じてるのか?
それにうっすい財布は失礼だ。ナチュラルに人をディスるな! お前の財布より僕の財布の方が金入ってるよ。一応一流冒険者だからな。
今日は僕って事がバレないように、ヅラに眼鏡で変装してるけど。そうだ、このおかっぱ頭と眼鏡が僕を老けさせてるんだ。そうに違いない。
なんか金貨一枚って聞いたらいい仕事のような気がする。けど、よく考えたらまる1日で金貨一枚、荷物持ちの相場は半日で銀貨七枚くらいだから、まる1日だと、金貨一枚と銀貨四枚。まあ、飯付きならばそこまで悪くないけど、違うならブラックだ。
「で、寝床と飯はどうなんだ?」
「自分でなんとかしてって言いたいとこだけど、しゃあないわねー。うちらで面倒見るわ」
まあ、元々依頼料貰ってるから、別に金額はどうでもいいんだけど、彼女たちが自分の意思で僕を雇ったと誤解してもらうための茶番だ。
「じゃ、準備して、あと1時間後には出発だから」
「了解、1つだけいいか? アンタらが依頼を失敗したからって、報酬をケチるのは無しな」
「しっかりしてるわねー。だてに年食ってないわね」
「余計なお世話だ」
かなり強引に仕事を投げられた。まあ、それだけ彼女たちが荷物を持ちたくないって事だろう。まあ、坊ちゃん嬢ちゃんばかりだもんな。体力が無いんだろう。
今回の依頼は新人冒険者の護衛。護衛の任務を受けた金持ちの息子と娘の新人冒険者をバレないように守るって言うのが内容だ。なんでこんなウンコのような仕事を受けたかと言うと、泣きつかれたんだ、この国の国王に。なんか、その冒険者たちのうちの1人の母親が元カノとか言うほんっとうに下らない理由で、引き受けさせられた。ポルトは国王なのに、それはそれは見事な土下座で僕に頼みこんだ。多分、その元カノはポルトの恥ずかしい過去かなんかでも知ってるのだろう。この国、大丈夫か?




