護衛の護衛 1
「おいオッサン」
つり目の女の子がなんか言ってる。振り返るが誰も居ない。んー、どこにオッサンが居るんだ?
「オメーだよ。オメー。オメー以外にどこにオッサンが居るんだ?」
なんと、僕をオッサンって言ってるのか? 目は大丈夫か? こう見えても全くオッサンって呼ばれる年齢じゃないぞ。
「いやー、俺の目には見えない、お前にだけ見えるオッサンがいるのかと思った」
「おいおい、それじゃうちがラリってるみてーじゃねーか。そもそも、もう荷物持ちはオッサンしかいねーだろ。キョロキョロしたってオッサンが若返ったりしねーよ」
まじか、まじで僕がオッサンって呼ばれてるのか? 見たとこ女の子はハイティーンくらい。まあ、年の差があるからそう見えるのかもしれない。どうでもいいけど、ハイティーンって言葉は、王国製西方語で、西方語のネイティブは、レイトティーンエイジャーと言うらしい。この前、導師ジブルがドヤって宣ってた。
今僕が座ってるのは冒険者ギルドに入ってすぐ左側の荷物持ちスタンバイスペース。だが、今日売れ残っている荷物持ちは僕だけだ。やたら景気がいい依頼が立て続けに入り、みんなホクホク顔で仕事に行った。
そして、仕事待ちをしてるとこに少女がやって来た。その格好は皮の鎧に剣を佩いて、ワンドも腰から吊している。たぶん職業は、今流行りの魔法戦士。剣も使えて魔法も使えるオールラウンダー。僕とは正反対の属性だ。その後ろには男の子2人と女の子2人。合コンパーティーかよ。あ、ハーレムパーティーよりはまだマシか……
最近王都では、魔道都市との提携で魔法学校が増えた。庶民でも学べるリーズナブルな金額のスクールもあり、魔法を使える者がぐんと増えた。まあ、僕はスキルのお陰と不器用なので、魔法はピーキーなやつ1つしかつかえないが。
それに元々王都では武術が盛んだ。剣術を嗜む者は多い。それで最近の新人冒険者には剣も使えて魔法も使える奴が増えてきた。
まあ、僕から見たところ、その魔法戦士は、ザコ狩りには役立つが、自分より強い者に対しては手も足も出ない、あんまり有益なクラスだとは思えない。やっかみも入ってるけど。
万能型とかなんか格好良さげだ。まあけど、強い魔物に対しては強力な攻撃が必要。魔法戦士では火力不足だ。
そうは言っても、その汎用性の高さから、生存能力は高いと思われる。まあ、強くなるのには時間がかかると思うけど、死ににくいからゆっくり強くなって欲しいものである。
考える事一瞬、少女がまた口を開く。
「うちら今から出るんだけど、荷物持ちしてくんない?」
うわ、コイツ、僕が引き受けて当然って感じだ。
「そうだな。嫌だね。自分の荷物くらい自分で持ちな」
僕は少女から目を逸らし、またオレンジジュースを楽しむ。最近オレンジジュースって高いんだよな。しっかり味わわないと。




