危機一髪
「くそっ、ここも汚い。ダメだ」
僕は雑貨屋さんのトイレを見て落胆する。うちのトイレは綺麗だ。無駄に収納ポータルを使って、あと、マイと導師ジブルの飽くこと無き探求による改良でいつも綺麗に保たれている。それに慣れてしまった弊害で、汚いトイレは受け付け無くなってしまった。
王都は魔道都市との交易でその点は魔道具により改良され、だいたいの食い物屋や、儲かってる商店などは綺麗なトイレを備えている。それで、そこそこ良い感じの雑貨屋に飛び込んだのだが、そこのトイレは外付けで、とっても汚かった。使用に耐えれない。
「ぐうぅっ。なんでだ、なんでなんだ」
僕はお腹が強い。子供の頃、大抵のものは口にしてきた。ちょっとくらい腐ったものでも問題なく消化出来る。それに、何度も毒殺されそうな経緯もあり、下剤なんか微塵も効かない。その僕がお腹が痛くてトイレを探している。なんでなのか理由を考えても思い浮かばない。
第一のウェーブはなんとか凌いだ。次のウェーブまでになんとかしないと。冒険者ギルドに行くか? いや、ダメだ。あそこでは今だにガキのような悪習がはびこっている。あそこでトイレの個室に入ると上から水かけたりとかタチが悪い冒険者がイタズラしてきたりするのだ。下っ端がやられるのはまあ理解出来る。けど、顔が売れた今でも度胸試しをしてくる馬鹿がいるのだ。それにあそこに巣くう悪鬼、子供族のパムに見つかろうものなら、ギルド全体に響くような声で、アナウンスされたりする可能性がある。前にパムのパーティーのリーダーのデュパンがやられてた。
「皆さーん。今、うちのリーダーがでっかいう〇こしてまーす。戻って来たらみんな拍手ーっ」
こんな事やられて、デュパンは謎の拍手喝采で辟易してた。そして、その後のパムのセリフで、2人は仁義無き戦いを始め、止むなく仲裁したのを覚えている。ギルドはダメだ。
それから、いろんなところのトイレを攻めたが、どこもクソ汚い。止むなく権力に頼る事にして、王城へと向かう。さっきからもう我慢できなくなりつつある。
運良く門番が僕の顔を覚えていたので、詰め所のトイレを貸して貰えた。
よしっ。綺麗だ。まるでうちのトイレみたいだ。準備をして解放しようとする。その時、頭に止めろと声がしたような? 僕は動きを止める。え、ここは僕のベッド? う、お腹が痛い。僕はうちの綺麗なトイレに駆け込む。
思い出した。昨日はワインを飲んだんだ。それで、朦朧としながら寝たから、夢を夢だと気づけなかったんだ。お腹が調子悪いのもワインのせいだろう。
僕は背筋が凍りそうになる。もし、夢のトイレが綺麗だったら、夢の最後で放ってたら。僕の尊厳は地に落ちた事だろう。
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