道祖神 9
「ん、どうしたんだ?」
なんかヒラツメは僕に謝るような事したのか? まあ、存在自体が迷惑なので、それについてはどんだけ謝ってもお釣りが来ると思うが。プライバシーがゼロだもんな。
「ほらー、みてみて、ここら辺、木がほとんどないじゃん」
「ああ、そうだなそれがどうした?」
走るのに夢中で、いつの間にか獣道からも外れてた。とはいうもの、森を抜けてるからどこも平坦で道のようなもんだ。
「それになんとなく盛り上がってるし、みてみて、上とか周りも少し進んだらまた森よね」
良く見渡すと、どうもここだけ盛り上がってて、ちょうどかなり広い丸い形に森が消失してるように見える。
あ、なんかもう分かったこれはアカン奴だ。僕は即座に走り出す。足下の地面が柔らかくなる。
「ゴメンねー。スライムの真上まで来ちゃってたー」
「早く言えーーーーっ!」
地面が凹み僕は飲み込まれていく。まじか、さっき見た円の範囲がスライムって事か。デカいって言ってもデカ過ぎだろ。もうちょっと詳しくサイズを聞いときゃ良かった。
僕はズブズブと飲み込まれていく……
『ゴメンねー。私のせいで……』
ヒラツメが直接頭に話しかけてくる。
『これで、私とスライムは繋がったらから、私が滅ぶまでの間はここで食い止める事が出来るわ』
僕はしこたま息を吸い込んだので、まだまだ大丈夫だ。なんか肌がチリチリする。これしきでダメージは受けないが、こりゃまた服はダメになったな。
『なんでこんな事したんだ?』
僕はヒラツメが僕をスライムに取り込ませようと元々考えてたと確信している。まあ、それも僕が悪いんだが。
『これしか方法が無かったのよ。こんな化け物誰にも倒せないわ。アンタには犠牲になってもらって悪いけど、私が消滅するまで、アンタの魂は守るわ。ずっと一緒にここで消えるまでお話しましょう。ずっとずっと』
『…………』
僕らはゆっくりゆっくり、暗い中ヌルヌルした液体の中を落ちていく。
『ねぇ、なんか、してよ、楽しい話』
『やだね。こんな暗くてヌルヌルした所で何を話しても楽しくねーよ。お前、ここから離れたら飯食えるのか?』
『何言ってるのよ? 食べられるわよ』
『じゃ、美味いものでも食いに行こうぜ』
『もう、無理よ。どうしようも無いわ。あなたは食べられてるのよ。もう、何も食べる事は出来ないわ。私も』
ダメだ。なんかネガティブに入ってやがる。
『じゃ質問だ。ここで、俺とずっと一緒に朽ち果てていく。それがお前の望みなのか?』
『私は、この山の草木の神。この山が死ぬなら私も死ぬしかないわ』
『うるせーよ!! 答えろ。それがお前の望みなのか?』
『そんな訳ないじゃない! 私だって、私だって、外に出たいわよ。楽しかった。ただ走っただけで。風を感じたのなんて本当久しぶり』
『そっか。なら出してやる! 外に出してやる!』
ようやくスライムの底に足が着く。
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