道祖神 8
「うっほほーい」
僕は1人だということもあり、童心に帰って無心で走る。両手を開いて風を体全体で浴び、口から言葉がほとばしる。たしかこれは感情をもった眼鏡の機械少女の言葉。かなり前に王都で流行ったらしい。誰かに見られて無いからこんな自由な事もできる。
「あんたね。1人じゃないっつーの。私の事を忘れないで」
うわ、そうだった。なんか変なのに寄生されてたの忘れてた。
「変なのはひどいわね。けど、確かに本当に気持ちいいわね。そこらにこのまま寝っ転がりたい気分ね」
今は熱くもなく、寒くもなくとっても過ごしやすい。
ん、気持ちいい? もしかして、ヒラツメ、感覚も共有してるのか?
「『ヒラツメ』じゃなくて『ハラツメ』だって言ってるでしょ。当然じゃない。アンタの見るもの聞くもの嗅ぐもの食べるもの出すもの。全て感覚共有してるわよ。ほんっと、生きてるって素晴らしいわねー」
ん、なんか微妙にお下品な事もさらりと言ったような。なんか、年取った女性って下手したらそこらのオッサンより下品な事言うもんな。なんかやだなー。まあ、けど、マイに限ってはそんなにならない事だろう。女性はいつになっても綺麗なものでいて欲しいものだな。
それよりも、感覚も共有されてるのかー。こら、変な事出来ないなー。まあ、変な事なんてしないけど。こりゃ、さっさと破壊神って奴をやっつけないとな。
「ちょっと、何よ今の。めっちゃアンタ顔の割りには考えるの速いのねー。ゆっくり考えないと、何考えてんのか分かんないじゃないのー」
あ、何も考えずに思考加速してたけど、追い着いて来れないのか。こりゃいい事聞いた。加速モード継続してやる。
っと、何も考えずに走ってたけど、森の木々が減り、坂の勾配がさらに急になってきた。確か破壊神ってでっかいスライムだったよな? そんな影まったく見えない。もしかして、会話に夢中で通り過ぎたのか?
「で、そのでっかいスライムヤローはどこに居やがんだ? とっとと倒してお前とおさらばしたいんだよ」
「何よ、つれないわねー。そんなに私と別れたいの? 散々私を利用するだけ利用して、要らなくなったらサヨナラなのね」
「利用してるのはお前の方だろ。どこでそんなセリフ覚えたんだよ」
「これね、前に寄生してた女の子が捨てられる時に吐かれた言葉よ。可哀想よねー」
可哀想って言ってるわりには、口調がさらりとしてるなー。なんかドロドロしてる話っぽいから、これ以上突っ込まないどこう。
「あっ、ごめんごめーん」
ん、ヒラツメ、突然どうした?




