道祖神 6
「それ、どうなってるんだ? なんかお前の作りが良くなってってるが」
ヒラツメは、最初は風化した雨ざらしの古代の石像みたいで、なんとなく顔が分かるくらいだったのが、今では動き出しても不自然じゃないくらい生命感に溢れている。肌が石でできた小っこい女の子にしか見えない。可愛らしいんだけど、目だけが人間の目なんで、不気味だ。
「何言ってんのよ。作りが良くなってるんじゃなくて、元に戻りそうになってるのよ。アンタがしつこく結界を通ろうとしたから弱くなってきてるのよ」
「えっ、まじか。俺のせいか。それなら、もしかして、何もしなくても、もうすぐその封印って解けるのか?」
「そうね。んー、あと大体10年くらいで解けるかも。森や草が減ると私の力は弱まっていくから」
なんか、なんとも言えないな。
「そっか、封印が解けるのも、俺たち人間が自然を破壊してってるからか……」
見るからに山の裾は開拓されていた。人間が破壊した自然で、人間が自然からしっぺ返しを食らう。自業自得だ。本当の破壊神は人間なのかもしれないな。
「えっ、違うわよ。スライムがモシャモシャ草木を食べてるから、あたしの力が減ってるのよ」
「えっ」
なんか変な勘違いしてたみたいで、顔が熱くなる。恥ずかしいなー。
「ん、そう言えば、お前の声が普通に聞こえてるな。さっきまではなんか変な感じだったのに」
「あ、それね、さっきの ごっつんこでアンタと心を繋いだのよ。これでいつでもアンタと話せるわ」
「なんだそりゃ、新手の呪いか?」
女の子の声がし続けるって、ヤバくないか? いろいろ。
「ちがうわよ。よーく考えて。私の言葉ってずっとここに居たにしてはナウいでしょ。それは、こうやって、どうにか騙して額をつけて、人と心を繋いで勉強してきたのよ」
「今、お前、騙してって言ったよな。もしかして、破壊神の話も嘘だったのか?」
「違うわよ。騙してってって言葉は悪いけど、そうそう人間って石像と頭をくっつけたりしないのよ。アンタだってそういう事してる人見た事ないでしょ」
そりゃそうだ。そんな人見た事ないし、しようとも思わない。なんで僕はノリでやっちまったんだろう……
「だから、なだめすかして私の知識や力を与えるって言って、心を繋いだあとは、やっぱり無理でしたーって謝って来たのよ。一回繋いだら、10年くらいしか持たないから意外に大変なのよ」
いかん、ツッコミ所が多すぎる。
「10年もお前の声を聴き続けないといかん訳か?」
まあ、ジブルに頼んだらなんとかなりそうだけど。
「無理無理、魔道士とか神官とかでも解除できないわ。私のこれは、強い祝福だから」
「お前、今、心を読んだな」
「当たり前じゃない。繋がってるんだから。大丈夫、私は温厚な神だから、アンタがどんな趣味を持っててもドン引きしないわ」
「ドン引きするような趣味は持ってないわ!」
「大丈夫よ。破壊神をぶっ倒してくれたなら、私はここから動けるから、すぐにリンクを解除してあげるから」
これは困った。破壊神とか他人事と思ってたけど、やっつけないと、コイツにずっと憑依されたままだ。
「憑依って悪霊じゃないっつーの」
「黙れ!」




