収納の世界へ
「「「かんぱーい!」」」
マリアさんが音頭を取って、今日の大盛況を祝する。
今日は僕達の二階の居住区から机と椅子をおろして客席を増やし、調理長はアルバイトをいつも1人のところ、あと臨時で2人雇っていた。準備万端で望んだのだけど、愛くるしい妖精にさらに大きなタライに入った人魚も加わって、それはそれは忙しかった。今日も全てを売り切った。
「はぁー、楽しかったわ」
人魚は椅子の上にタライを置いて器用に食事を口にしている。歌う、注文とる、料理運ぶ、外でお客さんをキャッチする。人魚は何でも器用にこなした。しかもいつでも最高の笑顔で。さすが四天王と言うだけはある。
「ナディア、あんたいい仕事するじゃない!明日も一緒に働いてあげるわよ」
「ミネアも凄いわよ、その体でよくジョッキとか運べるわね」
いつの間にか妖精と人魚は仲良くなっていた。一緒に戦った絆だろう。僕達は今日の反省とかしながら料理を楽しんだ。
「マリアさん、今日はありがとうございました」
「では、うちもまた明日参ります」
リナと人魚はマリアさんからアルバイト代を貰って部屋の隅の魔法陣があったところに向かう。
「待って、スキル鑑定は?」
「あ、そうだった。ラパンちゃんのスキルは剛力と壊れた収納。収納の中に意識を入り込ませたら多分中身出せるわ。ミネアなら解るんじゃない?じゃまた明日」
人魚は水をしたたらせながら、部屋の隅に浮き出た魔法陣に消えていった。
「じゃ頑張ってね、わらわは眠いからまた明日」
リナちゃんも魔法陣に消えていった。
「収納に意識を入り込ませる?んー、ラパンやってみて」
ミネアに促されて、訳が解らないのでとりあえず目を瞑ってみる。
「うーん、解んない……」
「じゃ、収納の事を心に強く考えて」
「収納、収納、収納」
念じるも何もどうやったらいいか思いつかないので、目を閉じて呟いてみる。
「スリープ、あんどサイコダイブ!」
ミネアの声が聞こえると、なんかぼーっとしてきてめっちゃ眠くなる。僕は耐えられず、意識が途切れた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「ううん…」
目を擦って開けると、そこは真っ白な所だった。
「やっほー、起きたー?」
座っている僕の横に妖精ミネアが飛んでいる。
「あたしたちは今寝てて、ラパンの心の中に今いるわ。今は夢の中のようなものだけど、上手くいったみたいね、ザップの収納とも繋がってるみたいだわ、見て!」
ミネアの指さす方には、巨大なハンマーが転がっていた。おおきな鉄球に沢山の刺と長い柄がついている。なんか懐かしい気がする。おずおずと触れて見る。
「ザップのハンマー。やっぱりラパンはザップなのね。奥に進むわよ」
僕は白い空間の中をふわふわ飛んで行く妖精のあとについて行った。