道祖神 5
「ふうん。デカくてヤバい奴なのか。じゃ、倒してくるから、この結界っぽいもの解いてくれよ」
『ちょっとー、あんた軽く言ってるけど、あんたなんか、けちょんけちょんの返り討ちに合うわよ』
「おいおい、お前そいつを封じ込めてるんだろ。倒して欲しくはないのか?」
ひらつめのみこと。面倒くさいからヒラツメと呼ぼう。コイツが言うヤバいデカい化け物は何なのか考える。オーガ? んー、その程度だと封印しないしな。トロール? そこそこ居るからな。ジャイアント? 多分普通の生き物じゃない。長い間封印されてたと言われてるのにまだ生きてるって事は、食事しなくていい生き物なんじゃないだろうか? それなら話が変わってくる。食事が不要な生き物はそれ以外のものでエネルギーを得ているもの。悪意を糧にしてる悪魔や、信仰や畏怖を集めて存在を保っている、神や邪神に属するもの。
「で、そのヤバい奴ってなんなのか?」
場合に寄っては、仲間を呼んだ方がいいかもしれない。物理に強いものや効かないもの、悪霊とかのような肉体を持たないものだと、僕だと分が悪い。
『スライムよ』
「スライム? スライムって、あの水羊羹みたいなスライムか?」
『そう、でっかい水羊羹みたいなスライムよ。それはそれはでっかいスライムよ』
そうか、スライムなのか。けど、確かにでっかいスライムは厄介だ。けど、所詮スライム。物理攻撃は効きにくいけど、叩いたり切ったりでもぶっ殺せる。僕の絶剣山殺しの錆にしてくれる。
けど、僕の強さを少しは実感しないと封印を解いてはくれないだろう。
僕は数歩下がって絶剣山殺しを出して正眼に構える。
『はぁー? あんたばかなの。そんなの使える訳ないじゃないの』
コイツは多分植物の妖精だ。さすがに森林破壊は嫌がるだろう。僕は道の上で木に気をつけて山殺しをブンブン振るう。
『アンタならもしかしたら、倒せるかもね』
「ああ、任せろ」
『しばらく封印を解くから、その内に中に入って。それで、もしアンタが破壊神を倒せたら封印を解くから。あ、その前に私の額にアンタの額を当てて』
「いやだよ。変態みたいじゃん」
『四の五の言わないの。アンタは変態みたいじゃなくて、変態よ。あんなものブンブン振り回すなんて』
ガチ変態みたいな言い方止めてほしい。ちゃんと剣を振り回したって言ってほしい。
『それに大丈夫。誰も見てないから、とっととオデコにごっちーんとやっちゃいなさい。男なら細かい事気にしないの』
「はいはい」
何の意図があるのか分かんないけど、しょうが無いから、オデコを当ててやる。なんか生暖かい。それに、石像がさらに細工が精巧になっている。




