はんにゃのめん おわり
「体で教えてやる。立てやコラァ!」
僕はシャリーちゃんを威嚇する。怒ってる訳じゃない。演技だ。この角度じゃ位置調節が難しい。違うものを取っちまう可能性がある。
「マイ姉様、生意気なザップを教育するために、頭を上げてもよろしいでしょうか?」
シャリーちゃんは、無駄に勉強してるから言葉使いが慇懃無礼だ。なんか言い回しを見るに、混乱解けてるんじゃないか? 多分マイへの恐怖で素面に戻ったんだろう。
「しょうがないわね、いいわよ、好きにしなさい。けど、家具を壊したら弁償だからね。ザップも」
マイはそう言って椅子に座る。多分、もう、仮面への興味は失せたんだろう。今晩の献立でも考えてるのかもしれない。
僕がシャリーちゃんに仮面を被せたのは、ちゃんど解決策があるからだ。多分、あれは無生物だから収納に入る。もしそうじゃなくて生き物だったとしても、その手のやつはだいたい魔法生物。大概の魔法生物は僕の分解魔法で消滅させる事も出来る。
まあだけど、今回は前者で凌げるだろう。シャリーちゃんが顔を上げた瞬間に仮面の座標に収納スキルを使って強奪し、即座に右手に出す予定だ。仮面の力に頼ってイキってるシャリーちゃんは驚く事だろう。強きに弱く、弱きに強いかなりいい性格のシャリーちゃんの、力を失った時の手のひら返しが楽しみだ。
シャリーちゃんが顔を上げた瞬間にスキルを発動する。読まれたか? 立ち上がった瞬間に動きやがった。けど、成功だ収納に入れる事が出来た。
「俺を舐めるなよ。これを見ろ!」
僕は収納に入れたものを右手に出してシャリーちゃんに突きつける。
「なにそれ?」
目の前でシャリーちゃんが小首を傾げる。『はんにゃのめん』を装着したまま? えっ、何で? 手にしたものはなんか生暖かい布。青と白のストライプ柄。なんだこりゃ? クシャクシャしてるので引き伸ばしてみる。ゲッ、パンツ!!
「それ、私のパンツーっ! 何すんのよ変態!」
シャリーちゃんが叫ぶ。
「えっ、パンツ! 何やってんのよザップー!」
マイも立ち上がって叫ぶ。その顔ははんにゃだ。
「ごっ、誤解だーっ! 急に立つからだろ!」
ちょっと収納が遅れて、丁度、シャリーちゃんのパンツを収納しちまったみたいだ。なんという運命のイタズラ。はんにゃのめん、恐るべし被った者が混乱するだけじゃなく、辺りに混乱を巻き起こすのか!
そして、僕と2人のはんにゃの舌戦が始まった。なんとかマイをなだめ、隙を見てシャリーちゃんのはんにゃのめんを強奪した。
「で、それどうするの?」
マイが尋ねてくる。
「聖女とも言われた私ですら抗えない呪いのアイテムですから、どっかに封印した方がいいんじゃないですか?」
んー、シャリーちゃんはレジストできてたんじゃないのか?
「いや、収納に入れとくよ。俺らの誰かが新人をパワーレベリングしたい時に使えるんじゃないか? あの防御力だし、問題あれば直ぐに収納に入れられるしな」
「そうですね。じゃ、私に譲ってくださいよ」
別に高かったものじゃないから、シャリーちゃんにあける事にした。
しばらくして王都の冒険者ギルドで耳にした噂では、はんにゃのめんを被った冒険者が魔物の群れに囲まれてるのが度々見かけられたそうだ。シャリーちゃんの事だから、かなり高い金額でパワーレベリングしてる事だろう。
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