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 北の魔王の四天王


「ふー、やっと休憩か…」


 リナちゃんは見るからにくたくただ。慣れない事をしたからだろう。今日の昼も妖精ミネアが客引きをしてきたので大盛況だった。準備してた食材も売り切れ、僕達は休憩をもらった。


「リナ、夜も忙しいからしっかり今の内休むのよ」


 妖精も疲れたみたいで椅子の上でぐたーっとしている。


「リナちゃん、さすがですね、初めてとは思えない動きでしたよ」


 ぼくは素直にリナちゃんを褒める。力持ちで素早くて物覚えが良くてしかも可愛い。出来ればお店でしばらく働いて欲しいものだ。


「そうか?それなら良かった。レストランが、こんな大変なものだとは知らなかった。戦い、まさに戦いだな」


「リナちゃん、ありがとう。リナちゃんのおかげで、今日来たお客さんにはみんな喜んで帰ってもらったよ」


 僕は右手を差しだす。それをリナちゃんはギュッと握る。僕達はしばし見つめ合う。


「あれ、そう言えば、わらわはここに何しに来たんだろう?ザップ、ザップの生まれ変わりがいるか調べに来たんだった!」


 リナちゃんはアホの子なのか?


 いや、ここに来た主目的を忘れてしまうほど忙しかったからだろう。


「というわけで、表に出ろ、勝負だ!」


 リナちゃんは大声を出して僕をびしっと指さす。


「待って、僕はただの女の子だよ、勝負と言っても戦えないよ」


「そうなのか?戦えばザップかどうか解るとおもったんだが……それなら少し待っておれ」


 リナちゃんは店の隅に行くと、スカートに手を入れて何かを取り出すと床に落書きし始めた。あ、彼女のパンツも収納になってるんだな。けど、女の子がするにははしたなさすぎる行為だな…


「リナちゃん、何やってるの?マリアさんに怒られるわよ」


「大丈夫、使ってない時には見えないから」


 なんの事だろう?


 よく見ると、チョークみたいなので、床に魔法陣を描いている。


「よし、起動」


 リナちゃんは魔法陣の中に踏み込むと、その姿がフッと掻き消えた。そして、魔方陣はひときわ光ると消え去った。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 

「待たせたのだ!」


 しばらくして部屋の隅の魔法陣が光り、またリナちゃんが現れた。その後ろからもう1人現れる。


「スキル鑑定のプロだ!」


 ぴちょん!ぴちょん!


 水の垂れる音がする。


「「に、人魚」」


 僕達の目が驚愕に見開かれる。内陸のこの国では魚は貴重品だ。その中で、このくらいの大きさの魚になると、もはや幾らの値がつくか解らない。しかも生きてるから鮮度も最高だ。


 しかもめっちゃ可愛い。ウェービーな青い髪に纏っているのは銀色の貝殻をかたどったブラジャーのみ。リナちゃんと同じような恰好だけど、人魚と言うだけで違和感がない。


「ハロー、人魚のナディアです。好きな食べ物はぶり大根です」


 人魚はふよふよ宙を浮いてる。その尾びれからぺちょんぺちょんと汁が垂れてる。なんか生臭い匂いがする。あーあ、掃除しないと……


「おい、魚が魚食うなや!」


 妖精が人魚の顔の前で、人魚ビシッと指さす。なんでいきなり喧嘩腰?


「うちのネタにつっこんでくれた事はありがたいけど、おい、そこのひらひら飛んでる虫けら、うちを魚いうなや!」


 ビチョ!


 人魚が尾びれを振り、ネトッとした液体がきれいに妖精にかかる。妖精はぶるぶる小刻みに震える。


「やんのかコラァ!」


「やらいでか!」


 妖精と人魚は戦闘態勢に入り互いに攻撃をしかける。


 僕は妖精を掴み、リナちゃんは人魚を押さえる。なんかヌメッとした液体が手につく。


「ミネア、あなたらしくないよ、どうしたの?」


 僕は優しい口調でミネアの目をじっと見る。


「だって、人魚よ、人魚!あいつがもしここに居座ったら、あたしの人気が若干もってかれるわ!アイドルはあたし1人で十分よ!絶対あいつ人魚だから歌もうまいはずよ!」


 妖精が手をぶんぶんしながらまくし立てる。


「へー、虫けらよくわかったわね、うちが歌がめっちゃうまいって。あたしの歌と魅力でどんな生き物もめろめろよ!」


 人魚は空中でくねっとポーズをとる。


「虫いうなや魚!」


 ミネアが吠える!


「魚いうなや虫!」


 人魚も吠えかえす!


「もうっ、子供じゃないんだから、2人とも仲良くしようよ。めっちゃ可愛いよ2人とも。今晩はみんなで仲良く店を盛り上げよう!」


 妖精と人魚は僕を見る。2人とも視線が下がり僕の胸を見ている。失礼な奴らだな。


「まあ、一番子供なラパンがそういうならしょうがないか。ごめん人魚、あたしが大人げなかったわ」


 妖精は人魚に頭を下げる。ん、なんか引っかかる。


「ま、そういうなら、今日のとこは勘弁してあげるわ」


 人魚は微笑む。やばいキュンと胸が締め付けられる。この娘は生まれながらのアイドルだ……妖精が不安になったのも解る。


「じゃあ、ナディア、今晩は頑張るわよ!」


 リナが拳を突き上げる。


「はいっ!ノースガルド四天王が内の1人メイロシュトロームのナディア出陣します!」


 こうして、僕達は今日のディナーに新たな強力な仲間を迎えた。


 ん、なんか忘れてるような?



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