ワープポータル (終わり)
「3・2・1。ファイヤー」
何がファイヤーなのかは分からんが、気分の問題だ。やはり出て来ないか。僕はハンマーと服を収納にしまうと裸で部屋を走り回る。目を閉じ気配を察知しながら、再び必殺魔法を使う。
「原始の世界」
今日は3回目。さすがにきつい。さすが僕、天才。走り回りながら魔法を使ったら、部屋全部を解呪できる。壁に手をつきながら瞬間で部屋を1週し、足の感触で描く円を小っさくしていく。魔法の効果時間は短い。気合いで時間を伸ばす。
「キャッ!」
「ぐえっ!」
なんか柔らかいものを踏んで蹴った。アマンダとチェルシーだな。これで殺したら洒落にならないので、目分でポータルを出してエリクサーをかけながら軽く蹴り飛ばす。
あっ、居た。コイツだな。
「死にさらせー! そこだーっ」
無性に腹が立つから、何か居ると感じた所に問答無用のドロップキックを放つ。
ドゴン!
よし! 命中。目を開いて着地する。なんか物体が壁にめり込んで、クレーターを作っている。やり過ぎたか? 何が居たのか分かんない。まあ、敵な事は確かだから、ま、いっか。壁際に女の子が二人いてこっちを見ている。穴が空いたローブを着てる女の子と、ボロボロな鎧を着けてる女の子。チェルシーとアマンダだ。良かった。目頭が熱くなるけど、堪える。男は涙を見せぬものだ。
「お前ら、大丈夫か?」
僕は出来る限りのイケボと勝負顔を放つ。死地から救い出してくれた僕。今の二人には僕が輝いて見えてるはず。
「お腹減ったー。担々麺はよー」
グゥーキュルルル。
チェルシーからどこから出してるのか疑問に思う程でかい腹の虫の鳴き声が。
「格好つける前にパンツ穿きなよ。もうそれ見飽きたわ」
アマンダの視線は僕の下半身。うげっ、裸になり過ぎて忘れてた。急いで後ろを向き服を着る。なんか締まらんなー……
「で、どういう事だったの?」
チェルシーが口を開く。僕らは食事を終えて、椅子にぐてーっと座っている。コイツは今度は五杯も食べやがった。
「まじで、骨になった時は焦ったわー。もう私たち死んでるのかと思った」
アマンダは四杯食べやがった。どうでもいいけど、二回目からお金を払って貰えなくなった。ま、いいけどさ。
「んー、お前らが骨になったのは、さっき壁のシミになってた奴がやった事だろう」
目の毒なので、収納に入れてある。獣の毛のようなのもあったから、魔物には間違いない。その隣に今度は扉があるからいつでもここからでられそうだ。それにしても疲れた。精も根も尽き果てたってヤツだ。しばらくここで休まないと能力がかなり落ちている。
「幻覚を解除した瞬間にまた幻覚をかけられたんだろう。だから、それを解除した。まあ、あまり格好いい方法じゃ無かったけどな」
「さすがにドン引きよねー」
チェルシーが僕を見る。暖かいジト目なんか初めて見た。
「裸で走り回ってるし、私たちを踏んだり蹴ったりするし、まさにケダモノだったわねー」
アマンダも暖かいジト目だ。流行ってるのか?
バタン!
扉が空く。ゲッ! マイとアン。勢い良く飛び込んでくる。
「ザップー! 今日は何したの! 裸で走り回る? 女の子を蹴る?」
マイは顔がまっ赤だ。なんでいつも変なタイミングで来るんだ?
「ご主人様。鬼畜、鬼畜なのですね」
アンは楽しそうだ。
「「えっ! ザップ!」」
チェルシーとアマンダが驚いている。この顔が見れたから、後はもういっか。とりあえず。
「じゃ、後は任せた。あーばよーっ!」
マッハで、マイの横をすり抜ける。
面倒くさい事は、逃げるに限る。あいつらと話したらマイの誤解も解けるだろう。
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