ワープポータル (9)
「だめだめー。まったくびくともしないわー。1回降りるわねー」
梯子の上でしばらくアマンダが調べたり叩いたりしていたみたいだが、何も出来なかった。降りて来て、みんなで地べたに座る。
「次は私が行く」
チェルシーは鎧をテキパキと外す。梯子を僕とアマンダ、て言うか僕が押さえてチェルシーが天井を調べる。チェルシーは布のスラックスなので、思う存分眺められるが、なんて言うか、下から女の子を眺めるのはなんかエッチだ。胸やお尻の形がよく分かる。どうも天井はかなり固いみたいで、チェルシーは小さいハンマーで叩くけどパラパラ砂が落ちてくるだけだ。
「無理無理、どうもならないわー」
長い時間、チェルシーは天井をいじって降りて来る。梯子を倒してしばし休む。
「次はお兄さん、行って来てよ」
アマンダが上目使いで頼んでくる。もう、さすがにいっか。二人が梯子をまた立てようとする。
「あ、それはいらんぞ」
僕は収納から愛用のハンマーを出す。
「うわ、なにそれ。おもちゃ?」
チェルシーは近づい来て、僕のハンマーに触れる。
「おもちゃじゃねーよ。俺の愛用のハンマーだ」
「これって、外だけ金属で、中は木で出来てるんでしょ」
ん、ハリボテと勘違いしてるな。床にハンマーを柄を立てて置く。
「な、なにこれ、動かない」
チェルシーはハンマーの柄を手に持ち上げようとするが、微塵も動かない。
「それって、ミノタウロス王のハンマー」
アマンダが呟く。
「鉄球に持ち手がついてて、普通はこれってモーニングスターとかメイスって言うのに、これをハンマーって言い張る人は一人」
「えっ、アマンダ、もしかして、兄さんの事知ってるのか?」
「常人では持ち上げる事さえ出来ない規格外のハンマーを振り回す最強の冒険者と言えば」
「言えば?」
「チャンプ・ザ・ホルモンマン。元傭兵都市オリバンの剣闘士で、何度も大会で優勝した伝説の男よ」
「違ぇわ!」
ついツッコむ。最近活躍してなかったからもしかして、知名度が下がったのか。けど、なんだよそのいかにも偽名っぽい名前は。しかもなんか名前が微妙に僕に被せてあるのが腹立たしい。有名商品のバッタ物かよ。
「俺はザザ。少しは冒険のサポートも出来る便利な荷物持ちだ」
僕はハンマーを片手で握りジャンプする。そして、下から上にハンマーを振り上げ天井を強打する。
ドゴン!
一撃で天井は粉々だ。ハンマーを手に華麗に着地する。チェルシーもアマンダもあんぐり口を開けている。人って呆気に取られると、まじで口が緩むんだな。




