ワープポータル (8)
「どうしたんだ?」
つられて上を見る。アマンダが足を大きく上げて手作り梯子を登っている。当然ローブの裾が捲れて、パンツ的なものが見えている。フリフリがついた黒だ。即座に目を逸らす。ラッキースケベに関しても、マイにバレたら怒られるもんな。
「アマンダ、冒険にもあんなシャレたパンツ穿いてきてるんだぜ。ダンジョンで、そうそう出会いなんて無いのに、変な奴だよな」
「うっさいわねー。あ、もしかして、お兄さん見た?」
うっ、答えられないな。
「お兄さん見たのね。けど、チェルシーも悪いから、金貨一枚で勘弁してあげるわ」
「高いだろ」
「冗談、冗談。まあ、これで色々してくれた事もチャラって事で」
それでも高いだろ。まあ、いっけどな。
「て言うか、チェルシー。あんたみたいにババァみたいなパンツ穿いてたら、もしなんかあった時に恥ずかしいじゃ無いの。もし、私たちが死んで装備を剥がれた時に、この娘たち若いのに、だっさいパンツ穿いてる、とかなったら恥ずかしいじゃないの!」
恥ずかしいって2度言ってる。そんなに重要なのか?
「何言ってるのよ。私は、偉大な冒険者になるから、ダンジョンなんかでのたれ死んだりしない。それに死んだら恥ずかしいなんか感じないんじゃないか?」
んー、そもそもこの二人、僕が来なかったら、もう今、この場でのたれ死んでたんじゃないのか? こういうのなんて言ったかな? 自分だけは大丈夫って思うの。正常性バイアス。確かそんな名前だったよな。今まで、体験した事が無いような危険にさらされたら、想像力が働かなくなるから、楽観的になるらしい。まあ、けど、今まで僕が陥った危機は、それが無いとパニックになってたと思うから、そこまで悪いものでは無いと思う。
「それにちゃんとした下着は長持ちするのよ」
「なんか高い服買う人ってみんなそんな事言うけど、それって騙されてると思うわ。倍の値段の下着買っても、倍の時間保たないでしょ」
うん、僕もそう思う。けど、何、こんなとこで話し込んでんだよ。
「おいおい、それより、早く登って調べて来てくれよ。腕がつりそうだよ」
まあ、あと10時間程この姿勢でも問題無いんだが、それより、もうここに居るのも飽きた。
「ごっめーん。お兄さん。チャッチャと調べてくるわ。もう上見ないでよ。なんか変な感じに食い込んで。次見たら、絶対お金取るわよ」
まじか、見てみたくなってきた。少しだけなら。
「じゃ、お金払ったら見ていいのか? で、幾らだ。適正価格なら払うぞ」
「冗談よ。冗談。シャレにならないから、まじ見ないでー」
「しょうがないな。じゃ、とっとと登ってくれよ」
それにしてもアマンダは鈍くさい。登るのに結構な時間がかかった。




