ワープポータル (5)
「じゃ、そろそろ調べてみるか」
飯食って落ち着いた事だし、そろそろ行動を開始する事にしよう。
「何言ってるの?」
チェルシーが口を開く。
「私が、床と壁、全て調べたけど何も無かったわ。私たちのパーティーでは、私が罠解除してるのよ。あんたが来るまでに散々調べたわよ」
「おいおい、罠に引っかかって転移してきたのは誰だ? あんたが調べたから何も無いって言われても説得力ゼロだぞ」
「そういうあんただって、罠に引っかかった口でしょ」
ブーメランだな。
「まあまあ、オッサンが調べたいって言うならさせてあげなさいよ」
アマンダははしたなく床に寝っ転がってる。何か魔法使いって自由な奴多いな。けど、それよりも。
「あんたら、さっきから、俺の事をおじさんだのオッサンだの。そんなに歳食ってないわ」
「ええーっ、じゃー、もしかして、まだ二十歳いってないの?」
「いや、超えてるが」
まあ、とっくの昔に二十歳なんか過ぎてる。
「私達まだ17歳よ。だからオッサンじゃない」
アマンダはそう言うとニヤける。まあ、そりゃそうだがなんか腑に落ちない。
まあ、とりあえず、辺りを手当たり次第調べてみる。ここはだいたい20メートル四方くらいの部屋で、全てが石壁に囲まれている。壁も床も天井も岩を掘ってつくられたみたいで、継ぎ目が無くゴツゴツしている。そして、四方の壁の中央に窪みがあって、中に岩の突起があり、その先端が燃える事無く光っている。魔法使いが使う「ライト」の魔法に似てるから、仕組みは分かんないけど、多分何らかの魔法的なもので光ってるのだろう。
収納から出した小さいハンマーで、壁や床を隅々まで叩いていく。向こうに空洞が無いか調べるためだ。どんなに巧妙な隠し扉でも、向こうにスペースがあれば叩いた時の音が変わる。
「収納持ちって便利なんだな」
チェルシーが話しかけてくる。手は休めずコツコツ壁を叩いていく。
「まあな」
「けど、私たちも一通り叩いてみたけど何も無かったよ。諦めるんだな。隠し扉なんか無いよ」
「おいおい、もしかしたらあるかもしれないだろ。あんたもしかして、ここから出たく無いのか?」
「そんな事無いよ。けど、もうどうしたらいいか分かんないんだよ」
チェルシーは今までに無いくらい沈んだ顔をする。女の子にそんな顔させちゃいけないな。
「なんで、なんで、オッサンはそんな元気なんだよ」
「なんでって、そりゃ、決まってるだろ。こんな事大した事無い。まあ、数時間以内にここから抜け出してやるよ」
「そうか、オッサンは楽観的なんだな」
「おいおい、信じて無いのか? じゃ、ここから出られたら、俺の事、お兄さんって呼べよ」
「ああ、分かった。それくらいお安いご用だ」
少しチェルシーは元気になったようだ。




