おしぼり
「よろしければ、こちらお使いください」
いつものウェイトレスがニコニコ笑顔で僕に布切れを渡してくる。なんだこりゃ?
ギルドのバーでいつものジュースを頼んだら、一緒に持って来てくれた。
僕は仕事を終えて一息ついてるとこだ。今日のパーティーは『野蛮隊』。文字通りの野蛮極まりない男達、マッスルマニアのレリーフと、歩く下ネタマシーンのパムと、冒険と言う名の拷問を耐え抜いたとこだ。コイツらとは二度とシティアドベンチャー系の依頼は受けないと心に誓った。羞恥心が無い側の人間の僕でさえも、恥ずかしくて顔から火が出そうな目に何度も遭った。たしかに、有名になると羞恥心には別れを告げないといけない局面は多々ある。だからと言って、アイツらは無さ過ぎる。
そして、パムはエール、レリーフはプロテインドリンクなるものを頼んでる。それも一緒に来て、パムとレリーフにも布切れが渡される。
「これ、なんなの?」
多分手拭きの一種だと思うが、初めての事なので、一応聞いてみる。
「これは、『おしぼり』と言います。東方和国ではお食事処では、必ず水で絞ったこれが出てくるそうです。これで、手を綺麗にすると気持ちいいですよ。最近ギルドで飲み食いする人が減ってるんですよ。それでサービスの一環として始めてます」
「ふーん、それで、なんて名前なの? もう一度言ってよ」
パムが天使のような笑顔で問いかける。
『おしぼりです』
「おしりぼり?」
パム、またしょうも無い事を。
「おしぼりです!」
「おしりボリボリ?」
しつこいな、オッサンかよ。
「面白く無いですよ。おしぼりです!」
「おしぼり? と言う事はどこを絞っていいのかなー?」
パムは手をワキワキする。天使のような顔だから許されてる? けど、普通の男がそんなんしたら、しばかれてる事だろう。
「つまんないですよ。そんなに絞りたいのなら、自分のどっかを絞ってください。わたし、忙しいので失礼します」
ウェイトレスも慣れたものだ。去ってくウェイトレスの背中を見ながら、パムは腰の前で何かをしぼるジェスチャーをしてる。コイツ、そろそろギルドも出禁になるんじゃないか?
ウェイトレスが去る途中踵を返し、戻って来る。
「それって、手を拭くものですからね。決して変なもの拭かないように……」
ウェイトレスの言葉が止まる。あ、手を拭くものだったね。いかん、つ胃僕は顔など拭いてしまった。
「ごめん」
とりあえず謝る。
「ザップさんはいいです。パム、レリーフさん、それ以上したら弁償して貰いますよ。それ、リースしてて業者に洗って貰ってるんだけど、再使用出来ないものは買い取りになるんですから!」
見ると、レリーフは脇、パムは立ち上がって股間を拭いている。コイツら弾け過ぎだろ。自由すぎだろ。
そして、しばらくするとギルドのバーのおしぼりサービスは無くなっていた。どんだけ注意しても、おしぼりで体を拭いたり、武器を手入れする奴が後を絶たなかったからだそうだ。まあ、冒険者は自由な奴ばっかだからな。
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