気付いて無いのか? (終)
「ほら、お前、それ、ポポクテ草だぞ、それ、一株だけで、道家1枚だぞ」
「あっ、はい」
「って、お前、それは、ぶたのふぐりだ。毒にも薬にもならないぞ」
「えっ、じゃ、これですか?」
「そうそう。それそれ。ほら、口だけじゃなくて、手も動かせ。薬草はむしってなんぼだからな」
「はい、ありがとうございます」
あたしは引っこ抜いた薬草を籠に入れる。
ザップは、なんて言うか、『薬草奉行』だ。鍋や焼き肉で仕切る人の薬草バージョン。それにしても、なんで男の人って、好きな事を仕切りたがるんだろう? あたしは自分のペースで薬草を狩りたいんだよ。
それにしても、ザップの薬草採取は神業だ。雑草薬草に関する知識のみならず、その取るスピードが尋常じゃない。誇張抜きで手が見えない。玄人はだしだ。
あたしはもう我慢出来ずに口を開く。
「あのう、ザップさんってただ者じゃないですよね。普通、荷物持ちってそんなに薬草極めて無いです」
「ん、何言ってんだ? これくらい荷物持ちなら普通だろ。じゃ、お前、食べる物無い時、何食ってんだ? 薬草の知識があれば、食うに困らないだろ。もしかしてお前、野草、食わないのか?」
あんたが食べられるって言ってんの雑草だよ。レディに雑草食うの勧めるなよ。無いのか? デリカシー。
もしかして、ザップって『雑草プロフェッショナル』の略なのか? それにザップって話しかけてもリアクションしてるし、お前の名前はザザって設定じゃなかったのかよ。
ツッコミ所満載だけど、あたしは小心者なので口に出来ない。だって、大木を大剣で斬り捨てる化け物さんだよ。
それからもザップはあたしにお節介焼きながら、鬼神のように薬草を狩り続けた。おかしいだろ。小っちゃい収納って設定どこ行った? 明らかに家一軒分くらいは集めたよね、薬草。
そして、二人で帰る。いつの間にか、ザップのハーレム入りしたいとは思わないようになった。多分、あたしじゃ無理だし、デリカシー無いし。まあ、友達としてはいいけどね。
そして、換金するとかなりの金額になった。あご、外れそうになったよ。
「ありがとう、ザザ、じゃかんぱーい」
「乾杯」
ギルドのバーで飲み物を奢ってあげる。儲けたからね。ザザはジュース、あたしはエールだ。
「なんか悪いな。いただくよ」
「また、機会があったら、よろしくね」
それから、あたしはザザと別れた。よろしくとは言ったけど、月一くらいでいいよ。一日が濃過た。クタクタだよ。
最後までザザは正体バレて無いって思ってたみたいだ。バレバレだよ。けど、あたしの中じゃザザはザザだ。
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