気付いて無いのか? (4)
「ひどいもんだな。根こそぎ行ってやがるな。しょうが無い。森に入るか」
ザップが言う通り。葉っぱを使う薬草は、根っこだけになったら枯れやすいから、何枚か葉を残すのがマナーだ。だけど、これは誰も教えてくれなくて先輩とかから引き継ぐものだ。薬草が枯れてしまったら、最終的には自分たちの首を絞める。
ザップについて森へと向かう。ザップは後ろを見ないのに、あたしの歩行スピードに合わせてくれている。こういうとこってポイント高いわよね。あたしに気を向けてくれてるって事だから。
けど、なんかザップって年の割には枯れたオッサンみたいなのよね。なんかあたしに興味が無いっていうか、あんまり普通の男みたいに、あたしの足や胸をガン見しない。まあ、いいとこなんだろうと思うけど、なんか釈然としない。ハーレムの女の子だけで満足してるのかもしれない。
森を歩き、広場に出る。木々がなぎ倒されていて結構な広さがある。まるで、かつて怒り狂った巨人が暴れたようだ。その倒れた木々の間に多種多様な草が生えている。
「へー、こんなとこあったんだ」
あたしは素直に驚く。ギルドにもこんな場所の情報は無い。
「ここはあんまり人が立ち寄らないからな」
「ここってどうやって出来たんだろ」
あたしは見渡す。その答えは出ない。
「前に、オークと冒険者が戦ったらしいな」
オークと冒険者? なにそれ、よく見るとポツポツと切り株がある。その断面は滑らかで、まるで、一刀のもとで気を切り倒したみたいだ。何をどうやったら冒険者とオークがこんな環境を作れるんだろう?
「何言ってるのよ。どうやったらこうなるの?」
「多分、オークごと大剣で木も切ったんじゃないか?」
「…………」
この人、何言ってるんだろう? 王都最強のパーティー『地獄の愚者』でも、前に最強だって言われてた大剣使いの坊主頭の人だって、こんな断面で木は切れないよ。
あ……
一人だけ思い浮かぶ。
『山殺し』
ザップ・グッドフェローが使うと言う化け物大剣。山を殺すってなによって感じだ。
ザップは天にも届く大剣でなんでもかんでも真っ二つにすると言われている。もし、それが本当なら、こういう地形を生み出す事も出来るかもしれない。
あたしの腰の後ろくらいがズーンと重くなる。これは、恐怖かも。目の前の人は、そんな事が出来るのか……
「ほら、さっさと採取しようぜ。魔物が出たら怖ぇからな」
はっ? 魔物が恐い? あたしゃ魔物よりこんな天外魔境を生み出せるあんたの方が恐いわ。
あたしは言葉を飲み込む。あたしは、触れてはいけないものに触れてるんじゃないだろうか?




