魔法の収納
「妖精、何しやがる。それにそれは多過ぎだろ!さっき金貨見えたぞ」
「おっ、少しづつ記憶戻って来たみたいね。そのあたしに対する雑な扱い懐かしいわー」
妖精が嬉しそうな顔で僕を見る。
「ラパンちゃん、もっと女の子らしい話し方をしなさい。せっかく可愛いのが台無しよ!」
マリアさんが僕をたしなめる。
「はーい、ごめんなさい……」
僕は頭を下げる。
しばらくゆっくりして、片付けて居住区の二階に向かう。妖精に戻ったミネアもパタパタ飛んでついてくる。結局お金は全部取られた。まあ、お金を余り使う事ないし、訳の分からないお金だったからいいんだけど。
「妖精さん、もしかして僕の部屋で寝るの?」
「当然よ、ラパンにはあたしを養って貰わないといけないから」
二階の僕の部屋に水のはいったタライを持ってきてタオルで体を拭く。妖精は服を着たままタライに飛び込む。
「うう、ちべたい……」
「妖精さん服濡れるよ」
「いいの、いいの、この服は魔法でそう見えてるだけで無いようなものだから」
「え、じゃ、いつも裸なの」
「そうとも言うわね」
僕には無理だ。見えてはいないけど裸で外を出歩くのは。
「この魔法、簡単だから教えてあげようか?」
妖精はタライを平泳ぎしながら話す。
「いや、いいです」
「そう、あーあ、ザップがいたら温泉に入れるのになー」
妖精はタライの縁に捕まってぼやいている。
「え、なんでザップさんがいたら温泉に入れるの」
「ザップは何でも入れれる収納をもってて、収納に家をいれてるのよ」
「収納に家?うわ、それってすごいヤドカリみたい」
「そうよ、そうだわ!あんた、ザップの収納つかえないの?さっきの要領でイメージしてみて」
僕は目を瞑ってみるけど、何も起こらない。スカートに手を入れて金のパンツに触ってみる。頭にイメージが浮かぶ。洋服、女の子の洋服だ。指先に何か触れるので掴んで引きずり出すと、ごそごそとその洋服が出て来た。
なんて気持ち悪いのだろう。
自分の部屋で良かった。人に見られたら多分絶交される。服を出したあとまた触ってみるがもう何もうかばない。空なんだろう。
「だけど、これってマジックアイテムだと思うけど、作った人って頭大丈夫なのかな?」
「まあね、それより、ザップの収納はつかえないの?」
「うーん、使えないのかやり方が解らないのか解らないよ」
「作った人、リナ!リナなら解るかも。ちょっと行ってくるわ。扉開けて!」
僕が扉を開けると妖精は弾かれるように飛んでいった。何なのだろう。小っちゃいのに台風みたいな生き物だな。