気付いて無いのか? (3)
「お前、すげぇな。あのパムさんをあっさり追い払ったな」
ザップが話しかけてくる。良かった。そこまで印象悪くなさそう。
「やっぱり、ああいうのはしっかり言わないとダメだと思うよ。なんであんなのが王都最強なんだろう」
「最強って言われてるから、あんなになったんだろうね。誰も注意出来ないからな。小山の大将だな」
「まあ、いいんじゃない。やってるのは、セクハラ発言や覗きばっかりで触ってきたりとかはしないらしいから。そんな事より、採取、採取」
「今日はなんかもうそんな気分じゃないんだよなー」
「分かった。なら、あたし一人で行くわ」
「一人でいく?」
ゲッ、またパムが現れた。
「パムさん、暇なんですか? それなら、もし良かったら、この子、今から薬草取りに行くらしいので一緒に行ってあげてくれないですか?」
な、何言ってるのよ。ザップ。なんか、パムがあたしとザップさんを交互に見る。
「んー、ゴメン、オイラ、暇じゃないわ、じゃあね」
そう言うとパムは消え去った。何を言いにきたんだよ。
「じゃ、あたし、一人で採集に行くわ」
言葉を選ばないとまたパムが出る。面倒くさいなー。
「しょうがないな、女の子を一人で街の外に行かせる訳にはいかないしな」
やった。やっぱザップはお人好し。こうやって自分の実力を隠して、新人冒険者や駆け出し荷物持ちとかにおせっかい焼いてるのね。けど、多分みんな気付いてると思うよ。バレバレだよ。
あたしは依頼票をはがし、受付けで処理してザップのとこに向かう。そして、二人で草原に繰り出す。
「らん、らんらーららん♪」
つい、鼻歌が漏れる。だって、『最強の荷物持ち』を護衛にしてるのよ。
「お前、上機嫌だな。なんかいいことあったのか?」
「うん、教えて欲しいー?」
「ああ」
「だめー」
「うぜー奴だな、まったく」
あたしたちは街道から草原に出てウロウロする。
「んー、ここら辺はあらかた刈り尽くされてるな」
「最近、若い子多いもんね」
最近は王都に冒険者になろうと上京してくる人が多い。冒険者学校が出来たのもその原因だろう。さっきも1パーティーを遠くで見かけた。キラキラしてたから新人だろう。
それに歩き方がピョコピョコしてた。最近気付いたんだけど、新人と熟練は歩き方が違う。熟練は頭を動かさずに滑るように歩くのに、新人は頭を上下に揺らしてピョコピョコ歩く人もいる。多分歩き慣れてないからだろう。ピョコピョコは無駄な動きだ。多分無駄に疲れる。あたしもそうならないように歩く時は気をつけている。
ザップを見る。ザップの歩き方は全く力が入って居ない。それに音が小さい。そんな歩き方する荷物持ち居ないよとツッコみたくなる。多分、今、ザップは襲われたとしても即座に戦えるのだろう。




