気付いて無いのか?(中)
「ふーん、ザザね。あなた、あんた、あんまり見ない顔だけど、いつもは何してんの」
危ない。つい、言葉遣いが丁寧になりそうになった。手のひら返したら、気付いたってバレる。慎重に慎重に。
「いつもは北の街で働いてる。たまに王都に来る」
「あんた、本持ってるって事は、結構稼いでるんじゃない?」
「いや、これは知り合いから借りたもんだ」
んー、やっぱズレてるわね。本持ってるような金持ちが荷物持ちに本を貸さないって。
「そうなんだ。で、なんで荷物持ちしてるの?」
「ん、そりゃな。俺はあんまり力無いけど、ちっこいアイテムボックス持ってるんだ」
うそつけ。そんな豪腕で力無い訳無いだろ。アイテムボックス? 収納スキルと何が違うんだろ。ま、それは置いといて、また確信に近づいた。収納スキルっぽいものを持ってるって事よね。中にどんだけ入るかは自分しか分かんないからね。
「へぇー。凄いわねー。いいなー。あたしもそれ欲しいなー」
ふふっ。姉ちゃんから習った男の落とし方を実践。男は褒めて褒めて褒めまくれって言ってたわよね。
「そんな大した事ねーよ」
言葉と裏腹にデレてるわね。
けど、どうしよう。このままだと仕事無くて解散か、それか仕事あったとしても荷物持ち二人雇う仕事なんか滅多にない。どうにかして、この人ともっと仲良くなりたい。そうだ。
「ねー。このままだと仕事なさそうだから、あたしとあんたで依頼受けてみない。あたし、将来は冒険者になりたいっておもってるの」
「んー、俺は丸腰だぞ。お前もだろ」
嘘ばっかり。知ってるわよ。収納の中に山程武器入れてるんでしょ。
「そうだけど、薬草取りとかだったら武器要らないんじゃない? 最近みんな頑張ってるから近くは魔物居ないでしょ?」
「そうだな。けど、男と女の子と二人っきりは良くないだろ」
いやいや、それを狙ってるんだって。
「何固い事言ってるのよ。兄さん、見るからに優しそうだから、問題無いわよ。それともあたしと二人っきりは嫌?」
あたしは上目づかいで彼を見る。
「ナニが固い? 二人っきりで?」
誰よ、変な事言ってるのは。
「ゲッ」
つい、声が漏れる。振り返ると子供。いや、これはパムだ。王都に悪名高い最強の子供族の痴漢。ギルドでエッチな言葉を言うとどこからともなく現れると言う。あたし何も変な事言って無いって。最悪だ。
「パムさん、俺を雇ってくれるんですか?」
あ、ザップが臭い演技をしてる。わざとらしいわ。普通の男はパムを見ると萎縮するって。
「ザッ、荷物持ちの兄さん、オイラは残念だけど男には興味ないよ。そこの子猫ちゃんが不穏な事言ってたからね」
ヤバっ。パムと目が合った。即座に逸らす。けど、コイツ、今、ザップって言いそうになったわよね。
「あっ、あたしは、そこの兄さんと冒険したいなーって」
「そんなの止めてオイラと冒険しようぜ!」
パムが親指を立ててウィンクしてくる。もしかしたら、パムとエッチな冒険したらお金を貰えるかもしれない。けど。
「そんな冒険したいなら、金払って風俗に行けよ。あたしは幾ら貰ってもアンタとは冒険しないわよ。親に顔向け出来なくなるわ!」
「いいねぇ、威勢がいい姉ちゃんだ。じゃ、今度ちゃんと荷物持ちで雇うから、そんときはよろしくね」
パムはあたしに笑顔を向けると去って行った。あーあ、せっかくザップと良い感じだったのに、これじゃ一緒に冒険に行ってくれないだろなー。




