表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1934/2115

 山賊サラダ


「おいっ、ねーちゃん、ここのシェフは素人なのかー?」


 胴間声が店内に響く。お洒落なカフェにそぐわない男、獣の皮の鎧にボサボサ頭にひげ面。その剥き出しのぶっとい腕には髑髏のタトューが入っている。見た目は頭にイメージ出来るごく一般的な山賊だ。けど、んー、多分、冒険者だな。盗賊系じゃないな。靴がゴツい。あれは大きな男を立てるだろう。戦闘職だな。


「なんで、あんな奴がこんなとこにいるんだろ」


 マイが山賊を睨む。まあ、たしかに浮いてるけど、まだ、ただ店員に絡んでるだけだ。おせっかい焼くまでは無いだろう。


「いかがなされました? お客様?」


 山賊のところに、コックコートにコック帽のおどおどした女性がやって来る。


「あん、お前がシェフか?」


「そうですけど」


「これ、見ろ」


 山賊は顎でサラダを指す。横着だなぁ。


「それが、どうなさいました? もしかして、何か入ってました?」


「いや、そんな事は無い」


「お口に合いませんでしたか?」


「うんにゃ、旨い」


 山賊とシェフの声だけが店内に響く。BGMを奏でていた吟遊詩人も演奏を止めている。


「それでは、どうされたのですか?」


「よーく見ろ」


 山賊はサラダを指差す。


「レタスだ」


「レタスですか?」


「レタスが切ってある。俺はここが素晴らしい店だと聞いて、こんど目当ての女の子をここに連れて来ようと思って下見に来た。だが、これはなんだ? オメーも料理するなら知ってるだろ。レタスはなぁ、千切った方が長持ちするんだよ。だから手で千切るものだろ。俺はただ失望した。今作ってる分の金は払うから帰るぞ」


 うわ、見た目と違って細かい奴だな。レタスなんか切ってあろうが、千切ってあろうが旨かったら関係ねーだろ。


 山賊は立ち上がる。けど、その前に立つのはマイ。


「おじさん、何か勘違いしてるんじゃない?」


「なんだ? お前は?」


「あたしが誰だっていいでしょ。レタスが切ってあるってそれがどうしたの?」


「んぁ、そりゃオメー。レタスを切るような二流の店なんかで金払って飯食えるかっ!」


「やっぱり、分かってないわねー。確かにレタスは千切ったら長持ちする。けど、長持ちするだけなのよ。気付かないのここは長持ちさせる必要が無いのよ。ずっとこまめにサラダを作ってるから、すぐに使うならレタスは千切ろうが切ろうが関係ないのよ。要は、レタスを千切る暇を惜しむくらいこの店は繁盛してるって事よ」


「えっ、まじか? そうなのか?」


 山賊はシェフを見る。シェフはコクコクと頷く。


「恥ずかしいな。俺の勘違いだった。後の飯も持って来てくれ」


 山賊はテーブルに戻る。マイも戻ってくる。


「おせっかいだったかなー」


「いやー、マイが行かないから。俺が行ってたよ。多分肉体言語になったけどな」


「だめだよ。こんなお洒落なカフェで揉め事おこしたら」


「そうだな」


 僕らはそれからカフェで軽食とデザートを楽しんだ。どれもこれも美味しかった。


 後で店員さんに聞いて話だけど、あの山賊野郎はタキシードで綺麗な女性を連れて来たそうだ。


 読んでいただきありがとうございます。


 みやびからのお願いです。「面白かった」「続きが気になる」などと思っていただけたら、広告の下の☆☆☆☆☆の評価や、ブックマークの登録をお願いします。


 とっても執筆の励みになりますので、よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
 下から集英社のオフィシャルサイトに移動できます。よろしくお願いします。
最強の荷物持ちの追放からはじまるハーレムライフ ~
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ