盗賊語り
アップ出来てなかったです(T_T)
「おう、兄さん久しぶりじゃねーか」
ギルドの隅から声がかかる。この声はラット。中級冒険者のオッサンだ。僕は今日は久々に一人で薬草採取に精を出し換金したとこだ。夏は冒険者の稼ぎ時、薬草はどんだけあっても不足がちで、薬草の価値は通常時より上がる。思ったより多い稼ぎだったので、なんか飯でも食おうかなって思ってたとこだ。
「定食1つとオッサンにエールな」
ウェイトレスに頼んでラットのテーブルにつく。
「相変わらず景気良さそうだな」
「ああ、アンタもな」
ラットがこの時間にクダ巻いてるって事はもう僕と同じくひと仕事終えたからだろう。この勤勉な盗賊はいつも働いている。
「ありがとな」
ラットはチビチビとエールを飲む。僕はまずは運ばれて来た食事をとる。そして、ラットはお代わりを頼み、僕はジュースを舐める。最近どうだったかなど上方交換をする。そして、粗方話しの種は尽きてお互い口をつぐむ。ふと思った事を尋ねる。
「なあ、オッサンはなんでこの仕事してんだ?」
「あん、そりゃお前さんと一緒だよ。気が付いたらこれしかなかったんだよ」
「オッサンは俺と違って器用だし頭もいいだろ。他の事も出来るんじゃねーか?」
「よせよせ、他は何も出来ねーよ。まあ、この年になったら今までやって来た事しか出来ねー。新しい事するのには何でも時間かかり過ぎんだよ」
そういうものなのか?
「そっか、オッサンは王国生まれなのか?」
「いんや、聖教国だ」
「じゃなんでここにいるんだ?」
「そりゃ、逃げては来たんだよ。あっちのギルドはひでぇんだよ」
ギルドって盗賊ギルドの事だろう。聖教国は帝国や王国と違って治安が悪く、町では盗賊ギルドの力が強いって聞いた事あるもんな。
「俺はわけぇ時は、気が付いたら組織のチンピラしてた」
ギルドに所属してないけど、ギルドの構成員の下についてる奴の事をあっちじゃチンピラって言っている。
「ガキの時親が死んで、街で一旗あげようって行ったんだが、あそこでやれる事は荷物持ちかチンピラしかねぇ。俺はガキの時に体が小っこかったからなチンピラしか無かったんだよ」
「どんな事してたんだ?」
「そりゃ金になる事はなんでもよ。組織に入ってた俺らのアニキはそこまで悪い奴じゃ無かったんだが、金持って行かねーと金持ってくるまで殴るんだよ。ギルドは俺らを守ってくれるが、金が足りないとほっぽりだされるんだ。その時に色々アニキに教えてもらったんだが、急に帰って来なくなった。ギルドの金を猫ババして逃げようとして殺されちまったんだよ。それで、俺らもギルドに追っかけられる事になって着の身着のまま教国からとんずらこいたって訳さ」
「大変だったんだな」
「まあな。だが生きてる」
やっぱ壮絶だな。けど、僕もどっかでボタンを掛け違ったら、そっちの道に行ってたかもしれない。けど、命の値段が低い世界だな。僕はこれからもお天道様の下で生きて行こう。
それからしばらく僕らは話しつづけた。
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