夏休みの終わり
「綺麗ねー」
月明かりに照らされてマイが口を開く。今日は満月、海でゆらゆら映った月が揺れている。心地よい波の音が響く。僕とマイは砂浜に直に座って海など眺めている。
夏も終わりが近づき、僕らは明日王都に帰る。アンジュたち少女冒険者四人、デュパンのパーティー『地獄の愚者』、ラパン率いるメイド軍団、そして、魔王リナの魔王軍団たちは一足先に帰ってしまった。ここに居るのはうちのメンバーだけだ。一緒に座ってるマイ、アンと導師ジブルとぽっちゃりエルフのノノ、黒竜王の化身オブは夜の海で泳いでいる。あいつらメンタル鋼だな。まじ、夜の海で泳ぐのは怖えよ。海の中は真っ暗だし、なんか引きずり込まれちまいそうだ。
本当に月が綺麗だ。隣のマイを見る。月明かりに照らされてマイも白い。素直に綺麗だ。僕のような冴えない男とマイは間違いなく不釣り合いだ。夢みたいだな。本当にこれが現実なのか? 実は僕は今寝てて、夢見てて、起きたらただの荷物持ちなんじゃないかって思ってしまう。今、ジャリ共は海、なんだかんだでマイと2人っきりになるのは海に来て初めてな気がする。
マイの事は好きだ。
けど、それを口にすると遠くに行ってしまうようで、ずっと口に出せない。マイが居て仲間が居て、この心地よい関係を崩したくなくて、ついつい何も言えない。けど、このままでいい訳が無い。いつかは言わないと、それは今なんじゃないか? マイは海を見ている。マイは何を考えてるのだろうか?
「餅や団子みたいですねー」
隣でアンがほざく。いつの間に横に来たんだ? いかんいかん、マイを見てて隙だらけだったな。そう言えば、今日は月がまん丸だもんな。
「まあ、丸くて白いから似てないって事は無いけど」
マイ、うちあうんじゃないよ。スルーだスルー。
「まあ、あたし的には団子って言うか、キラキラしてるから、綺麗にした銀貨みたいね」
なんかマイが早口だ。どうしたんだ?
「私、ずっと2人を見てたんですよ。マイ姉様はソワソワしながら月を見てて、ご主人様はまたソワソワしながらマイ姉様を見てました。せっかくみんなで打ち合わせして2人っきりの時間を作ってあげたのに、なんにも進展は無かったみたいですね。普通、こういう時はブチューって行くものでしょ。ブチューって」
「なっ、何言ってるのよ、アンちゃん。余計な気を使わないで。あっ、あたしも泳いでくるわ」
マイがタタタッと駆けていく。
「ご主人様、マイ姉様は待ってたんですよ。ご主人様が口を開くの」
「んな訳ないだろ。気のせいだ。気のせい。おら、俺たちも楽しむぞ、今年最後の海を」
そして、僕は波打ち際でバチャバチャ海を楽しんだ。2週間、しっかり海を堪能した。けど、今年も泳げるようにならなかったな。明日からしっかり働こう。
夏編終了です。少しでも夏気分を楽しんで貰えたなら幸いです。
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