妖精フィーバー
その日の夜は激戦だった。店の入口に妖精が立っただけで、夕方にはなんと店が満席になった。満席になったら妖精がテーブルを回ってお酒を勧めて、空席ができたらまた入口で客引きをする。
いつもだったら日が暮れたらお仕事は終わりなんだけど、あまりにも忙しくてどうしようもなく、今日は人通りが無くなるまで働いた。
いつもの3倍以上売り上げて、食べ物も飲み物も無くなったので、今日は早いけど店じまいとなった。本当に激戦。食べ物屋さんって本当に戦場だ。武器の代わりに飛び交うのは飲み物と食べ物という平和なものだけど。
『やばいと思ったら、順番に1組づつ応対するのよ』
マリアさんがよく言う事だけど、それは戦闘にもあてはまる。大勢に囲まれてやばいと思ったら、狭い所や壁を背にして出来るだけ1対1の状況を作って個別撃破を繰り返したら、いつの間にか好転しているものだ。
ん、なんで僕は戦いの事にくわしいのだろう?
「今日はお疲れ様でした」
マリアさんが口を開く。
僕達はテーブルについて目の前には飲み物と食べ物がある。今日の材料の残りだけど、大入り祝いだ。
「今日の立役者の妖精のミネアさん、まずは一言お願いします」
マリアさんがミネアに促す。今はミネアは妖精じゃなくて人間スタイルだ。
「はい、妖精のミネアです。今日は皆さんお疲れ様でした。明日もあたしの魅力で町のみんなをメロメロにしますので、大変ですけど、頑張りましょー!」
「では、かんぱーい!」
マリアさんが音頭を取り僕達は乾杯する。
今いるのは、僕、妖精、マリアさん、調理長、それにアルバイト2人だ。よくこの人数でこなせたものだ。
僕達はしばらく食事を楽しんだ。
「それで、ミネアちゃんは何時までいるの?」
マリアさんが妖精に問いかける。
「ふごっ、あーね、ザッ、ラパンが記憶を取り戻すまではいるつもりだし、この娘は私の何て言うか衣食住の面倒をみてくれる人なのよ、俗に言うパトロンってやつよ。やっと見つけたんで、ずっと一緒にいるわ」
妖精は食べ物を飲み込んで矢継ぎ早に話す。ということは、これからずっとこいつは一緒にいる積もりなのか?もしかして、僕は昔、妖精に取り憑かれてたのか?
「でさぁ、あんた何も思い出さないの?」
妖精は赤い顔で僕の頭をつんつんする。
「なんか、戦い方の考え的なものなら少し……」
「あ、そうだ、あんた金のパンツ穿いてるでしょ」
大声で恥ずかしい事を叫ぶ。みんなが僕を見る
「ミネアさん、ちょっと声小さくして下さい」
僕は顔が熱くなるのを感じる。
「わかったわ、ごめん。そのパンツ収納つきよ、パンツに意識を集中して触ってみて」
「嫌だよ、変態っぽいじゃない」
「四の五の言わずにパンツを触れ!」
妖精が僕の手を取ってスカートの中に突っ込む。急だったので対応できなかった。頭にお金のイメージが浮かぶ。
チャリン、チャリン、チャリン!
僕のパンツから金貨と銀貨がこぼれ出た。
「じゃ、これ今日の報酬ね」
妖精は落ちたお金を広い集めてポッケに入れる。
辺りは静寂につつまれた。
妖精以外何が起こったのかその時は理解できなかった。