姫と筋肉 海 4
「浸みるぅ。はぁあああー。いいわぁ」
リッチがBBAのような声を上げながら波打ち際に座っている。押し寄せ戻る波に腰くらいまで浸かってる。僕は足だけ入れてるけど、こりゃひんやりしてて気持ちいいな。そういえば、奴のエロ水着のおかげでなんか回りに男共が集まってるような。
「そう言えばさ、なんでお前らってレリーフとつるんでるんだ?」
前々からの疑問をぶつけてみる。どうみても、コイツらは高位のアンデッドだ。リッチエンペラーのこいつ、ドラゴンゾンビやジャイアントスケルトンや、変わり種のゴールデンスケルトン、それにドラウグルにアンデッドナイト。A級冒険者でも討伐が難しいくらいの高位アンデッドのオンパレードだ。そいつらが基本的に雑用しかさせられてない。不満は無いんだろうか? 暴走したりしないのだろうか? もっとも、僕の親友のシャリーちゃんにかかれば全員即成仏だけど。
「んー、そんなの当たり前じゃない。私達より強いからよ」
力だけの関係なら、気に食わなかったら逃げるって選択肢もあるはず。
「そうなのか、でも一緒にいて退屈じゃないのか? 雑用ばかりしてるだろ」
「退屈? あなた本当にそんな事言ってるの? 逆にあなたマスターと一緒に居て退屈を感じた事あるのかしら?」
リッチがクリクリの目で僕を見上げてくる。可愛いな。おい。けど、童顔で胸がデカいって反則だろう。んー、顔は僕も負けてはいないと思うけど、ボディは完敗だ。もいでやろか。
「確かに退屈じゃないや。むしろ疲れる」
「そうでしょ。それにマスターって面白いでしょ。私をか弱い女の子と同じように扱うのよ。一国を昔滅ぼした私を。まあ、けど、マスターやあなたから見たら、私も普通の女の子も同じようなもんよね」
一国を滅ぼした? 誇張つきだとしても剣呑な話だな。けど、僕的にはコイツはそんなに邪悪に見えない。
「普通は、私達みたいな者を召喚したら、戦いとかに使うじゃない。けど、マスターって、私達に戦えって言った事一度も無いのよ。今日だって手品のアシスタント予定だったし」
「まじか、やっぱあいつ、なんとも言え無いな。けど、一般人は、今のおまえみたいに力押さえてないと、見ただけで、気を失うから、それだけはレリーフに分からせられないのか?」
「そうよね。マスターは鈍感だからそういうの分かって無さそうだもんね。そこは気を付けるわ」
「おーい、おまえたち、仲良くしてるかー?」
人混みを擦りぬけながら、こっちに向かってレリーフが走ってくる。普通の人より頭2つ分はデカい。リッチといいレリーフといい、とても目立つな。僕は目立つのはあんま好きじゃないのに。




