姫と筋肉 海 3
「とっとと、土に帰れ。海に出るなアンデッド」
僕はリッチ女の頭を押さえつけてあの世に送り返してやろうとする。
「痛い、痛いって、痛くないけど」
なんかムカつくから更に力を込める。
ごりゅっ!
あ、やり過ぎた。なんかリッチの首がほぽ垂直に曲がっている。まあ、アンデッドだから死にはしないだろ。注意が逸れて力が抜けた隙を突かれてリッチに逃げられた。コキュっと音を立てて奴は首を戻す。そしてレリーフの後ろに隠れる。
「おお、いいぞねぇちゃんやれー!」
「小っこいねーちゃん、ひん剥けー!」
なんかギャラリーから品が無いヤジ飛んでくるな。見せ物じゃねーよ。気が付くと、男ばっかだし。リッチの水着のせいか?
「おい、リッチ女、吸い取っていいぞ」
「えっ、いいのラパンちゃん?」
「まてまて、それじゃ、私達が犯罪者になるかもしれない」
不本意な事にレリーフに止められる。
「ラパン、なんでお前は誰にでも襲いかかるんだ? それじゃ、まるで狂犬だぞ。頭冷やして来い。おい、リッチ、お前、ラパンと一緒に泳いでこい。それくらい出来るだろ。私は腕立ての時間だ。仲良くしろよ」
なんで、僕が悪いようになってんだ?
「はーい」
レリーフの影から出て来たリッチに手を引かれて海へと向かう。ま、暑いし汗かいたからいっか。
「よし、お前ら、今から腕立ての時間だ。筋肉は偉大だ。今みたいに、筋肉を巡って女性同士の争いが起きるほどだ。お前ら、筋肉が欲しいかー?」
「「おーっ!」」
なんか違うような気がするが、レリーフと離れられたからよしとするか。振り返ると。みんなで腕立てしてやがる。むさ苦しい景色だ。
「なぁ、お前、もっと大人しい水着持ってないのか?」
ちょっとこれはつらい。通る人通る人老若男女問わず僕らをガン見してきやがる。特に隣の奴の胸を。先だけ隠れててほぼ剥き出しだから見てしまうよな。僕でもこういう奴がいたらつい見てしまう。頭大丈夫かよ? って。
「持って無いわねー。ラパンちゃんの貸してくれる? あっ、ごめーん。どうやっても入らないわ」
くっ。やっぱ土に還すべきか。
「そもそも恥ずかしく無いのかよ?」
「恥ずかしい? 私のこのプロポーションを誇る事はあるけど、恥じる事は何も無いわアンデッドだし」
「て言うか、お前、こんな炎天下で大丈夫なのか?」
「大丈夫な訳ないでしょ。だからあなたからエナジーをいただいてるのよ」
まじか? もしかして僕、なんか吸い取られてる。ヒンヤリしてて気持ち良かったけど、手を離す。
「大丈夫よー。あなたの中から溢れてきたのを余す事無くいただいてるだけよー」
また、手を繋いできたけど、まあ、僕も何も不具合は無いのでそのままにしとく。けど、コイツ、海に入ったらふやけたりしないのだろうか?




