海での最優パーティー 14
「うぉら、うぉら、うぉらっしぇー!」
気合いを上げながら、デュパンが水竜を殴る。前足、首での攻撃はジニーが受け止めたり流したりする。レリーフは後ろ足にしがみつき、振り回されながらも逃げようとする水竜を引き留め、パムが水竜の柔らかそうなとこを殴る蹴る。パムは数度尻尾に薙ぎ払われ吹っ飛ばされたりもしたが、問題無さそうだ。多分このままでもいつか水竜を倒す事は出来るだろう。打撃主体だから皮や素材は損傷が少なく、高く買い取って貰える事だろう。けど。
「やっぱ、お前らまだまだだな」
見るに見かねて僕は彼らの方へと歩き出す。右手には愛用のハンマーを出す。巨大な水竜を素手で倒す。それは、冒険者パーティー『地獄の愚者』にとっては、また一つの勲章になるかもしれない。けど、今日の目的はそれじゃない。
僕は静かに駆け出してハンマーを大上段に掲げる。集中して水竜を見る。狙うのは一瞬。水竜が顎を開きジニーに噛み付こうとする。
ここだ!
全速力で駆け寄る。水竜の頭をジニーがかわした瞬間。跳び上がり、その額に僕は振り下ろしたハンマーを叩き込む。
ドゴン!
確かな手応え。水竜の首は地面でバウンドする。そして、足をもつれさせて倒れ込む。レリーフが下敷きになったけど、大丈夫だろう。マッスルだから。
「ザパンさん、何やってんですか? 俺らでも倒せましたよ」
鼻息荒くデュパンが近づいてくる。
「まあ、それはそうだが、お前ら、大事なこと忘れてるだろ」
「何の事いってるのよー」
ジニーも不機嫌そうだ。ここは狭いので水竜は収納に入れる。レリーフがむくっと立ち上がる。
「おいおい、そもそも、俺たちはここに何しに来たんだ?」
「あっ、そうだった。オイラたち食材の確保に来たんだった」
パムは思い出したみたいだ。
「お前ら、どうやって水竜を倒すつもりだったんだ?」
「殴り倒す予定でした」
デュパンが答える。
「殴ったらどうなる」
「打撲します」
「打撲ってなんだ?」
「内出血ですね」
「内出血した肉は?」
「美味しくない。って、ザパンさん、それはアンタだけですよ。こんなでっかいドラゴン見て、食おうって思うの、まずはなんとか討伐して、近隣の被害を食い止めようと思いますよ」
「んー、そうかもな。だから、肉が不味くならないように、俺が手を出したって訳だ。肉がグズグズな水竜とかもって帰ってみろ。マイや、アンが何言うかわかんないぞ」
「まあ、そりゃそうですね」
デュパンは納得したみたいだな。
「それより、お前ら何度か攻撃食らってたよな。なんで、水着は無傷なんだ?」
まあ、コイツらは人外に足を踏み入れてるから、体が無傷は納得出来るが、水着は布だろ。普通破ける。それを期待してた訳じゃないけど。
「あたしたちの水着は、魔道都市の最新作の冒険者用水着の試作品なのよ。ジブルさんからモニター頼まれてるの。伸縮自在でかなりの強度があるわ」
おお、そりゃいいな。さすがジブル。魔道都市の重鎮。僕も今度ジブルと話してみよ。
「来て見ろ、あそこになにかある」
レリーフが壁を指刺している。さっき水竜が倒れた衝撃で、壁の一部が剥離してて銀色の何かが見えている。
「あそこにナニがある」
パムが何か言ってるがスルーだ。




