海での最優パーティー 11
「んー、どうしたんだ?」
ジニーは悪い足場をものともせず、重心をぶらさずに走ってくる。さすが戦闘職。
「ちょっ、急いでついて来て。奥に凄いのがいるのよ」
言うなりジニーは僕らに背を向けて走る。それにパムとレリーフも続く。まあ、アイツらだったら大丈夫だろう。一応王都最強だもんな。僕はのんびり小走りで駆けていく。本当足場悪いもんな。ゴツゴツ岩が飛び出ている。コケたら痛そうだ。
洞窟はだんだん広くなり、壁は明らかに何かで打ち欠いたような跡が見える。岩が割れたような綺麗な断面が見える所もある。もともとあった洞窟を拡張したみたいに見える。もともと、この洞窟は所々上が空いてるみたいで、微かに光が差し込み暗闇では無かったんだけど、先の方が明るくなっている。真ん中の潮だまりもだんだん大きくなってくる。でっかいイソギンチャクや、ウニがいる。なんかでっかいフナムシみたいなのが走り去ったりする。この手のものがデカいのは気持ち悪いな。そして、洞窟がいきなり開けて、大広間に出る。そこにはデュパン達が、大きめの岩に隠れて奥を覗いている。洞窟の中央には光が差し込んでいて、その中央には水色の小山がある。よく見ると丸まった水竜だ。デカい。普通の水竜の3倍くらいの大きさはあるんじゃ無いだろうか? 僕はデュパンたちに近づく。そして、その横に腰を落とす。
「遅いですね。ザパンさん、獲物、とっときましたよ」
犬デュパンが小声で話しかけてくる。多分、デカ水竜が寝てるのを起こさないようにと思うけど、あのレベルの奴はそれくらいじゃ起きないと思うぞ。
「獲物もなんも、お前らがやれよ。王都最強を見せてくれよ」
「いやー、俺ら、ザパンさんが本気で戦ってるとこ見た事ないんで、後学のためにお願いします」
もしかして、怯んでるのか?
「俺は今休暇中だから戦わねーよ。で、エビはどうした? あんなデカブツなんかどうでもいいから、エビだエビ。あと、さっき見つけたデカいウニでも持って帰ろーぜ」
あの水竜は強いだろう。デカいっていうのはそれだけで力だ。仕事で来たのなら戦うけど、今はそういうモードじゃない。もう、頭の中はバーベキューだ。
「ちょっとー、ザパンさん、よく見てくださいよー」
ジニーが口を開いて水竜を指差す。もうヒソヒソは止めている。
「あの邪悪そうな顔」
水竜は穏やかな顔でスースー寝てる。
「沢山の人々を恐怖に陥れたと思われる邪悪な姿」
のっぺりとしたイモリみたいだ。スベスベしてそう。
「間違い無く、今まで人々に害悪を成して来たに違いありません。私は聖騎士と呼ばれる者の端くれ。邪悪を見過ごす訳にはいきません。ザパンさんは勇者の名を冠する者。邪悪を打ち倒すのに力を貸してください。そしてみんなで蒲焼きを食しましょう」
ジニーがキラキラした目で僕に手を差し伸べてくる。




