海での最優パーティー 9
「おい、デュパン、お前行って来いよ」
僕は巨大エビから目が離せない。なんか丸い目が微妙に動いて口からブクブク泡のようなものを吹いている。
「いやー、ザパンさん、譲りますよ」
デュパンが芋引いてやがる。僕は決してエビ如きに恐れをなしてる訳じゃない。エビって近づいたら後ろにシュバッと跳んだりする。まあ、洞窟の奥に逃げられるだけだとは思うけど、なんか攻撃したらスカりそうだ。そういうお間抜けなのはデュパンの仕事だ。犬だし。
「俺はいいよ。そうだせっかくだからお前らの強さを見てみたい。なんだかんだでレリーフとパム以外と冒険する事はあんまり無いからな」
レリーフとパムとは『ちん〇こ野蛮隊』と言う、口に出したく無い名前のパーティーを組んでるから、たまに一緒に冒険に拉致られたりするが、デュパンとジニーが戦うのはあんまり見た事が無い。
「じゃ、ご指名に応えて、あたしとデュパンで行くわよ。所詮エビ、頭を思いっきりぶん殴ったら気絶するでしょ」
ジニーがじりじりと前に出てくる。
「デュパン、やるわよ。とっととぶっ倒してあいつをエビフライにしてやるわよ」
腰を落として更にジリジリとジニーは進む。
「エビフライなら、タルタルソースがいいな」
ん、タルタルソース? エビフライはソースだろ。僕的にはソース一択だ。チキン南蛮、エビフライにタルタルソースは美味しいけど、揚げ物にさらにマヨネーズ系のソースはカロリー高すぎだろ。油で揚げたものに更に油をかけてるようなものだ。間違いなく太る。せっかく海に来るために食事制限してお腹をへっこめたのに元の木阿弥だ。それよりも。
「おいおい、あいつをエビフライは無理だろ。あいつの尻尾を揚げるのにどんだけの油がいると思うんだ? それに、鍋も無いだろ」
「何言ってるんですか、ザパンさん」
ジニーがこっちを見ずに答える。
「そりゃ当たり前じゃないですか。尻尾を適度な大きさに切ってフライにするに決まってるでしょ。あいつを見て、尻尾丸ごとフライにしようなんて考えるのはザパンさんくらいなもんですよ」
頭の中にエビの切り身をフライにしたものを思い浮かべる。うん、尻尾がなければ、トンカツや白身フライにしか見えない。
「おいおい、それじゃエビフライとは言えないな。尻尾の先が無いと、何がなんだか分かんないものになるだろ」
「ということは、ザパンさんはエビフライの尻尾を食べる派なんですね」
ジニーが振り返る。エビを見とけよ。
「いや、食わない。かなり餓えてない限り」
なんかエビの尻尾と昆虫って食感が似てるんだよね。基本的にエビの尻尾はアンに食べさせてる。
「それなら別に尻尾無くてもエビフライでいいじゃないですか」
ジニーは口を尖らせる。
「美味しいエビフライ作るので待っててください」
「おいっ、ジニー、声デカいって」
デュパンが小声で言う。
バジャン!
目の前からエビが消える。後ろに跳びやがった。ジニーとデュパンは泥飛沫を食らいまくっている。
「あーあ、でっかいエビ……」
つい言葉遣いが漏れる。
「追うわよ」
「お、おう」
ジニーとデュパンは奥へと駆け出す。




