海での最優パーティー 8
「なんで、そんなに蟹に詳しいんだ?」
正直、美味いから蟹はなんでもウェルカムだ。けど、小っこい蟹の素揚げはあんまり好きくない。あのガリガリ感が苦手だ。
「そりゃ、オイラ毎年この時期になると、シートルで蟹取って、王都で売ってるからだよ」
ああ、そうだ。コイツはいい加減そうに見えるがそうやってコツコツお金を稼いでるんだった。
「ちょっとー、早くとどめ刺してくれよ。意外にきついんだけど」
デュパンは振り回されながらも蟹を押しとどめている。
「へー、じゃ、あいつはどうやって食ったら美味いんだ」
「煮るよし、焼いてよし、蒸してよしですね。けど、でっかいから焼きが一番無難なんじゃないですか?」
「あたしは爪食べたいですっ! ザパンさんこいつ近くで焼いてたべましょ。持って帰ったら師匠たちや、アンさんにほとんどいいとこ食べられますから」
ジニーが言う通りだ。外ですぐに焼いて食うもアリだな。
「蟹と納豆って合いそうだな」
蟹納豆。聞いた事無いな。ということはミスマッチなんだろう。けど、今度蟹のほぐし身と納豆を混ぜて食べてみよう。新しい食べ物が生まれるかもしれない。
バキッ! ドゴッ!
「お前らワザとだろ! いい加減にしろっ!」
あーあ、やっちまった。デュパンは蟹の爪をへし折って蟹ボディを破壊している。蟹は死んじゃいないと思うが食いにくくなったじゃねーか。
「はい、やり直しー」
僕はポータルを飛ばして、蟹くんにエリクサーをかけてやる。みるみる全快すると、蟹はジャカジャカと奥に逃げ出す。そりゃそうだよな。
「はい、没収」
デュパンが担いでいる蟹爪を収納に入れる。僕の胴体よりデカいからまあ、最悪これだけでも良しとするか。
「また、納豆出そうか?」
レリーフが素っ頓狂な事言ってる。
「納豆と蟹は関係ねーよ。そんな事より追うぞ、ボウズだったらアンジュさんが怒り狂うぞ」
デュパンはそう言うと奥に進む。
「お前、狼なんだろ。奥からなんか臭いしねーのか?」
「ザパンさん、言ったじゃないですか。俺、納豆の臭い嗅いだら、鼻が利かなくなるんですよ。納豆の臭いしかしないです」
まじだったのか。
「それに、そもそも海の生き物は海の匂いしかしないですよ。蟹とか魚の臭いって死んで悪くなり初めてる臭いですよ」
「お前、もしかして、いっ、狼なのに肉より魚介派なのか?」
「ザパンさん、今、犬っていいそうになったでしょ。それはいいとして、王国じゃ魚介類は高級食材ですからね。俺の子供の時の夢はでっかいエビを食う事でしたからね」
「夢が叶って良かったな」
僕は指差す。
「はい、そうですけど、あれはデカ過ぎでしょ……」
目の前にはロブスター。クソデカいロブスターが潮だまりに浸かっている。




