海での最優パーティー 6
「うっひょー、でっかい洞窟だなー」
犬男は尻尾をブンブンしながら洞窟を眺める。うん、犬って穴とかに入るの好きだもんな。
「ねぇ、狩りは男共に任せて、あたしたちはゆっくりしときましょうよー」
ジニーがしな垂れかかってくる。
「そうだな、暑かったし、少しゆっくりするか」
僕らは洞窟の入り口の日陰で休む事にした。洞窟は岩が削られて出来たようで、気をつけないと足を取られそうだ。丁度座り易そうな岩に腰掛ける。海蝕洞って確か言うんだったな。長い年月をかけて、波が岩に穴を空けたものだ。洞窟の真ん中には海水が溜まっていて、今は歩いて中まで行けるけど、満潮にはどうなるんだろう。辺りに独特な匂いが立ちこめる。
「お前、何食ってやがる。冒険中は納豆禁止って言っただろ」
デュパンがレリーフに吠える。
「何言ってる。今はバカンス。何を食おうが自由だろ」
レリーフはシャカシャカ丼の納豆を混ぜる。なんか美味そうであるが、海で納豆は無いな。けど、納豆好きな僕としては、デュパンの言葉はいただけない。
「んー、なんで冒険中は納豆禁止なんだ?」
「ああ、簡単な事ですよ。俺の鼻が匂いでバカになって、索敵能力が落ちるからですよ」
「それは言い訳だろ。索敵にはパムがいる。お前は狼だから納豆食ったら口の回りにつくのが嫌なだけだろ」
レリーフが眼光鋭くデュパンを睨む。デュパン……犬の姿で納豆食うなよ。口の毛がベタベタなるのは分かるだろ。そんな犬に手をペロペロされた日にゃ動物好きの僕ですらブチ切れる。
「おいおい、それはお前も了承しただろ」
デュパンがやれやれする。
「今とあの時じゃ状況が違う。あの時は納豆賛成が私、反対がお前とジニー。どっちでもいいがパム。多数決で納得した。だが、今は賛成にザパンさんが加わるから五分五分だ」
勝手に人を納豆派に加えるなよ。まあ、賛成だけど。
「だから、パーティールールで決める。決闘だ。納豆をかけて決闘だ!」
「フッ、望む所だ」
デュパンとレリーフは立ち上がる。そしてレリーフは僕に納豆を手渡してくる。受け取るけど食わねーよ。生温かそうだもんな。
だが、コイツら本当に王都最強パーティーなのか? 納豆を食う食わないで決闘? バカなのか?
「ちょっと待ちなさいよ。決闘の必要は無いわ」
ジニーが僕から納豆を取って立ち上がる。
「ザパンさんが納豆好きなら、今日からあたしも納豆大好き人間よ!」
言うなりジニーは箸で納豆をかっこむ。
「無茶するな、ジニー。お前は納豆大っ嫌いだろ」
「平気よ。ザパンさんのためなら納豆くらい。て言うか、食わず嫌いだったかも。いける、中々いけるわ」
「そりゃそうだろう。私の自家製だからな」
僕はなんでこんなしょうもないコントを見せつけられてるんだろうか? ん、自家製? 発酵食品の自家製はヤバいだろ! なんか嫌な気が……
「おいおい、レリーフ、どうやって納豆作ったんだ?」
気になるから聞いてみる。
「簡単ですよ。豆に『ビカムアンデッド』の魔法をかけたら、簡単に出来ます。『死霊魔術』ってイメージは良くないですけど、生活魔法のようなものですからね」
レリーフの言葉に納豆を見る。そういえば微妙に納豆が蠢いてるような。もしかして、アンデッド納豆? それを全く気にせず食べてるジニー。メンタルは間違いなく王都最強だ。
『ビカムアンデッド』
確かそれは死霊魔術の奥義とも言える伝説の魔法の内の一つ。その魔法は人間を高位のアンデッドと化すもの。昔、一つの都市を壊滅状態に陥れたエルダーリッチが使ったとされる魔法。確かにレリーフは伝説の死霊魔術と言えるだろう。
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