因縁の戦い 7
「うぉおおおおおおおおーっ!」
アンジュが叫ぶ。
「こぉおおおおおおおおおおーっ!」
デルも声を絞り出す。
2人からしたたった汗が、砂浜に落ちジュージュー音を立てながら湯気が上がる。砂で目玉焼き焼けそうだな。アイツら素足で立ってるけど火傷しねーのか? 改めて、上級冒険者って化け物だな。背丈はデルの方があるのだが、1回体勢を崩したお陰で、アンジュが覆い被さるようにデルを攻めている。2人ともがに股で少女感皆無なポーズでブルブル震えている。なんのプレイだ。
「つまんないわねー。ちゃっちゃと終わらせなさいよ」
マイから非情な声がかかる。今いいとこなのに。美少女が2人、美少女の殻を投げ捨てて全力で力試しをしている。僕は身を乗りだして、拳に汗握りながら観戦してるのに。ロマンが分からんやつだな。
「マイ、好きにやらせろ。アイツらは今、己の全てを懸けている」
「ザップがそう言うなら」
危ねー、アンジュとデルの頭上に浮かんでた金色のポータルが消える。おいおいマイ、何をポータルから出そうとしてたんだ?
「アンジュ、頑張って!」
ミカが声援を飛ばす。
「デル、負けないで」
ルルはデルを応援する。ちなみにアンは飽きたのか水辺でゴロゴロしながら波と戯れてる。
「まずいわねー」
マイは顎をしゃくってる。気付いたよな。
「何がだ? 名勝負に水を差すなよ」
「もうっ、ザップだって気付いてるでしょ」
そう言うと、マイは僕の後ろに回る。
「な、何がだ?」
「あー、ザップが身を乗り出すからおかしいと思った」
「何言ってんだ?」
「デル、お尻ほぼ丸見えじゃないのー」
ばれたか……
デルの水着は食い込んで、ここからだと下の方はパンツ穿いてないように見える。眼福眼福。
「それに、2人のブラがもう限界。紐が千切れそう!」
うん、そうなのだよ。2人とも水着が落ちないようにか、かなりきつく紐を結んでる。それ故、少し広背筋がパンプアップしただけで、紐が千切れそうになっている。
そう、この勝負は彼女たちの力では決着がつかない。水着が切れて胸を披露した方が負けになるだろう。どれだけいい布地の水着を購入したかの勝負になっている。見たとこ、多分、デルの方が布地が安物だ。背中の紐が半分ほど千切れかけている。だが、そのかわりデルにはアドバンテージがある。ひんぬー故に布へのダメージがアンジュより少ないはず。多分、彼女たちは勝負に夢中で水着の事に気付いていない。アンジュが負けたらこっからもろに見えだし、デルが負けてもアンジュに押し潰されたりしたらワンチャンある。
「マイ、2人は己の存在すべてをかけて戦っている。それを邪魔する権利は誰にも無い」
「そうね。見守るしか無いわね……」
そう、見守るしかない。決してどちらの水着が千切れるのか楽しみにしてる訳じゃない。手に汗握る死闘の決着が気になるだけだ。
……出来ればデル勝って……




