第十九話 荷物持ちまたレベリングに励む
「銀色はなんだ?」
「シルバーポーションはステータスアップよ。これも高額で取引されてるわ」
「そうか。次も飲め」
「ええーっ!」
とにかく、マイにはヘルハウンドくらいは倒せるようになって貰わないと、手がかかりすぎる。ここを出た後もそれ程度になってたら、そうそう野垂れ死んだりはしないだろう。
僕も強くならないと。【ゴールデンウィンド】のメンバーは僕がこうしてるうちにもどんどん強くなっているはずだから。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「これで最後だ」
ザシュッ!
マイがこの階層最後のヘルハウンドの首を刎ね、僕はそれを収納に入れる。
食べる事しか考えてなかったから、マイに指摘されるまで、死体をそのまま収納にしまい込むという発想が無かった。マイはお金になる魔物の部位に詳しいみたいだから、今後はマイに判断させて収納に入れていこう。
この階層では、出来るだけマイにとどめは刺させてレベルアップをはかった。斧を振り下ろす動作も様になってきた。犬を倒すのはリザードマンよりは抵抗が無いみたいだ。
階段へ向かい降りる。次は地下46層だ。
「ねぇ、ザップ、どこまでいくの?」
「49層だ」
「えっ! 無理! 無理! どんなにザップが強くても最深層は無理よ!」
「大丈夫だ。そこから来た」
「ええーっ! だって、最深層に足を踏み入れて帰って来たのは伝説のパーティーだけよ!」
「その伝説は間違いなんだろうな」
ドラゴンは置いとくとして、僕が戦えるくらいな敵しか居ないから、実際は結構な数のパーティーが49層から生還しているのではないだろうか?
46層は45層とほぼ変わらない。けど、45層は3匹までしか一部屋にヘルハウンドは居ないが、46層は最大6匹まで部屋にいる。連携は拙いが数が増えるだけで、単独な僕には難易度が上がっていた。まあけど、安全地帯の噴水部屋があるのがありがたい。
だが、今はヘルハウンドは僕の敵ではない。ただの火球をくれる食料だ。出来るだけマイにとどめを刺させるようにして、この階層の全てのヘルハウンドを掃討した。結構マイは強くなったのではないだろうか?
ドロップ品はポーションの赤と青が幾つかと銀が1つだった。最後に噴水部屋へと向かう。
「受け取れ。銀は飲め」
噴水部屋でマイのリュックを出して、ポーションを渡す。多分青はヒールポーション、赤はマジックポーションだったと思うが、僕にはただの甘い汁だ。
「ありがとう! いただきます!」
マイは気合いを入れて、シルバーポーションを一気に飲む。
「多分今のは筋力ポーション。力が強くなった気がするわ。前のは敏捷ポーション、体が軽くなった気がしたし」
マイは興奮してまくしたてる。喜んで貰って何よりだ。
「ザップ、ありがとう、後のポーションは取っとくわね」
「ああ、次は飯にしよう」
「任せて」
マイは上機嫌でリュックをあさり始めた。