海の女王 7
「うん、それ、レリーフかパムにでもあげてくれ」
間違い無い。その水着が似合う人と言ったらその2人しかいない。スーパーマッスルなレリーフはブリーフがよく似合うし、象さんがついてるチャーミングさは可愛らしさを売りにするパムにぴったしだろう。
「ドラゴンよろしく羞恥心を母親のお腹の中に忘れて来た2人なら、その素晴らしい魔道具を喜んで使いこなしてくれるだろう。僕には荷が重い。荷物持ちだけど」
「ちょっと、あなた今ドラゴンをディスったわね。私たちにだって羞恥心はあるわ。弱い事はとっても恥ずかしい事よ」
シルメイスが声を荒げる。んー、それって羞恥心なのか? なんか違う気もするがやっぱりドラゴン脳筋だ。
「それに、それはあなたのための水着なのよ。その2人とも泳げるでしょ」
「だから、要らないって。なんで俺にこだわるんだ?」
「そりゃ、あなたの事を心配してるからよ。いつ海で溺れて死なないか気が気じゃないわ」
やー、絶対嘘。こいつが人の心配なんかする訳がない。
「んー、嘘くせーな」
「ドラゴンは嘘をつかないわ」
はい、嘘ついたー。アンは下らない嘘ばっかついてるぞ。冷蔵庫の中身食べて、食べて無いって嘘ついて、マイによく怒られてる。
「はいはい、分かったから。で、本心は?」
「そりゃ、あの2人が着ても面白くも何ともないわ。ザップがこれを着るから面白いのよ。あ、これ、もう一つ素晴らしいとこがあるのよ。威力最大にしたら、空も飛べるわ」
「ほう、まじか、それは凄いな。で、水が無くなったどうなるんだ?」
「そりゃ、落ちるわよ」
「死ぬな」
やっぱ、試作品と言い、どっちにしても自爆アイテムかよ。
「うん、普通の人だったら死ぬわ。けど、水面を進むなら大丈夫よ。足を広げて水を補給しながら進んだら、水面を高速移動する事が出来るわ」
ん、どゆことだ? 頭の中でシミュレーションしてみる。水面を足を開いて高速で進みながら、お尻から水を吸い込み、股間の象さんの鼻から激しく水を吐き出す。変態だ変質者だ。明らかに新手の魔物や妖怪だな。僕の目の前にこういう生き物が現れたら、問答無用で討伐してしまうだろ。
「そんなんいるか! ボケッ!」
僕はシルメイスから水着を奪うと、引っ掴み、全力で放り投げる。そして水着は大きく放物線を描きキラリと一瞬光ると海の中に入り消えた。
「悪は滅んだ」
「何やってるのよ。私達の力作ーっ!」
シルメイスは水しぶきを上げながら、走り去った。
「ねぇ、もう終わったのー? 茶番」
近くでマイが海から顔を出してる。
「ああ、終わった。後はアンの水着を回収しないとな」
「あの人、何しにきたんだろ」
「んー、そんなんシラナイス。シルメイスの考えないんてシラナイス」
マイは物言わず泳ぎ去った。スルーはきつい。面白く無いって言われる方がまだマシだ。
そんなこんなで、僕らの夏が始まった。
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