日常から
少しまったりしたあと蹂躙していきます。
「マリアさんお待たせしました」
マリアさんの前には木箱が沢山積んである。昼間農家さんから買った野菜とかだろう。
「ラパンちゃん、食材多くて手伝ってー」
「はい、オッケーです」
マリアさんは腰が悪いので、重いものは運べない。僕はひょいひょい木箱をキッチンに移動する。
「ありがとう。ラパンちゃん」
「いえいえ、僕でよければいつでも手伝いますよ」
マリアさんが僕を抱きしめる。暖かい。女同士なのになんか照れる。
「何照れてるの?なんかラパンちゃんって男の子みたいね。自分の事、僕って言うし」
なんか、自分のの事を『わたし』とか『あたし』とか言うのには抵抗がある。『僕』がしっくりくる。なんでだろう。
僕は夜はする事ないので、店の厨房で明日の仕込みの手伝いをする。芋の皮を剥いたり、野菜を洗ったり、する事は沢山ある。マリアさんは自由にしていいとは言うのだが、する事がないのだ。すぐ寝るのには早いしね。
「ラパン、ありがとう助かった」
一通り終わり、調理長が僕に礼を言う。
「いえいえ、お世話になってますから」
もうそろそろ、お店はお食事のラストオーダーで、深夜はおつまみとお酒のみのバースタイルに変わる。マリアさんはバータイムに僕が店に出るのを嫌がるので、今のうちに、店内のお客さんの空いた皿を下げに行く。
「空いた食器お下げしますね」
僕は笑顔で、食事が終わったテーブルの皿を下げて行く。最初は緊張してお店では何もできなかったけど、三カ月の修行の賜物で一通りの事は出来るようになったし、お店には僕に会いに来てくれるお客さんも増えてきた。
記憶が無くなる前は僕は何をしていたのかは解らないけど、僕はこの仕事が楽しくなり始めた。しっかり気を配って美味しいものを食べて貰うと、みんな笑顔になる。しかも僕達がお金を貰うのにお客さんはありがとうと言ってくれる。お金を貰ってるのに感謝される仕事ってなんかいい。
しかもいい人達ばかりだし、僕を助けてくれたマリアさん、ちょっとがさつな調理長、あとはお店を手伝ってくれるアルバイトの人達、それにお客さんも。みんな僕に優しくしてくれる。記憶が戻らなくても今のままの生活で幸せなのではと思う。
「まだ、飯、大丈夫か?」
扉を開けて冒険者風の四人組が入ってくる。初めて見る顔だ。しかも珍しい事に四人とも僕と同じくらいの年の女の子だ。
部分鎧の赤毛の戦士風、金髪でおかっぱのローブを纏ったやたら胸の大っきい多分魔法使い、サラサラとしたロングヘアーの革鎧のエルフ、小柄で神官服の上に部分鎧の張り裂けそうな胸の神官戦士。異様なのは全員背中に巨大な斧を持っている。あんな大きいのを扱えるのだろうか?
「まだ、ご飯作れるわよ」
マリアさんが答える。
「では、お任せで四人分、あと飲み物はジュースで」
エルフさんがマリアさんにお金を払って四人組はテーブルについた。