海の女王 3
「俺を殺す気か。まじで」
ブーメランパンツが爆発して舞い上げた飛沫が僕に降り注ぐ。危ねー、あれ着てても僕なら死んじゃいなかったと思うが、柔らかいとこ大事なとこが悲惨の極地になってたぞ。
「大丈夫? ザップ! どうしたの?」
マイが僕泳いでやって来て口を開く。
「シルメイスが危険な水着をもって来やがったんだ?」
「危険な水着って、もしかしてシースルー」
マイが珍しくボケる。確かにシースルーの水着は危険だ。水着としての体を成してない。
「違うって、爆発する水着を持って来やがったんだ。ちなみにアンが着てるのもそうだ」
「爆発する水着を作った訳じゃないわ。莫大なマナに水着が耐えられなくて爆発するだけよ。衝撃を与えなければ大丈夫よ」
なんかシルメイスが言い訳してるけど、結果一緒だろ。
「それって爆発する事には変わりないだろ」
「ええーっ! まじー! あれって水着が爆発したの? 新しい攻撃魔法かと思ったわ。アンちゃんが着てるのもそれなの? 危ないわ。脱いで。アンちゃんすぐ脱いで」
「ええっ。いいんですか」
アンが僕の方を見る。
「ダメダメダメダメっ。はしたないわ。こっちに来て、あたしが買ったのと交換してあげるから」
「マイ姉様、大丈夫ですよ。今までも大丈夫でしたし。そもそも泳いでいて衝撃をくらう事なんかないですよ。ご主人様じゃ無い限り。それに私ドラゴンですよ。あれしきの爆発くらっても毛が燃えるくらいですよ」
毛が燃える? そう言えば王国騎士の宴会芸でそういうのがあったな。けど、これにツッコむのは止めとこう。マイがいるからな。
「ダメダメ。それって裸になるって事でしょ。うちはスキニーディップ禁止よ」
ん、なんか聞いた事あるような無いような言葉だな。聞いてみよ。
「そのスキニーディップってなんだ?」
ぱあっとマイの顔が赤くなる。
「そっその、裸で泳ぐことよ」
まじか、全裸水泳の事か。マイって変な言葉知ってるな。そういえば、なんかそう言うブランドもあったような。スキニーディップって言えばなんか格好いいが、全裸水泳って言うととたんに品が無くなるな。まあ、それは置いといて。
「おい、アン、マイの言うとおりだ。そんな危険な水着着替えろよ」
「嫌でーす。せっかくお魚みたいに泳げるのに」
ちゃぽん。
アンは海の中に逃げやがった。僕には未来が見える。爆発して全裸になるアンが。そういえば昔そういう喜劇があったな。女性悪役のボスが爆発して裸になって吹っ飛んでくやつ。『倒されちやった悔しいな♪』とか歌いながら。
「まあまあ、ザップ。アンは放置しときましょう。あれは試作品。もっと安全な完成品もあるわ」
シルメイスがまた新たな布きれを差し出す。最初からそれ出せよ。




