海の女王 2
「ほう、それは良かったな。じゃまたな」
せっかく遊んでるんだから、とっとと帰って欲しい。
「ちょっとー。冷たいじゃないのザップ。せっかく来たんだから、私とも遊びましょうよ」
コイツら古竜が言う『遊び』と言うのはだいたいバイオレンスなやつだ。下手したら死ぬ。特に僕は泳げないからな。コイツは正直天敵だ。
「やだね。何が悲しくてバカンスに来て命懸けにゃならんのだ」
「そんな野蛮な事しないわよ。アンちゃーん」
シルメイスはアンに手を振る。
「はいはーい」
アンがこっちに向かって泳いでくる。
「なんだよシルメイス」
不機嫌そうにアンが口を開く。なんかドラゴン達ってみんな仲悪いな。
「なんだよじゃないでしょ。ザップ、これ凄いでしょ。アンちゃんが来てるのは私と魔道都市で共同開発した魔道具。『シルメイススイムスーツ』よ」
シルメイススイムスーツ。早口言葉みたいで言いにくい名前だな。
「まじかアンの水着って魔道具だったのか。で、どういう効果なんだ?」
シルメイスとの共同開発という事は、効果は一つしか思いつかない。
『水の操作』。
それで、アンの泳ぎが巧みになってたのだろう。ズルだ。
「まだ試作段階でデメリットがあるけど、想像出来てたと思うけど、私の権能『水の操作』の一部を付与出来たわ。着用してると、少しだけ水が思う通りに動いてくれるわ」
やっぱ思った通りだ。
「そっか。何が私の方が水の中じゃ上だよ。思いっきりズルしてるじゃねーか」
「じゃ、水着脱ぎましょうか? それでも私の方が上というのは変わらないと思いますよ」
「やめとけやめとけ」
止めないと、コイツは喜んで裸になるからな。僕は眼福だけど、マイが怖い。
「ねぇ、私の魔道具、素晴らしいでしょ」
シルメイスが水上で胸を張る。ん、揺れが大きいな? まあ、それより。
「すげぇなそれ。じゃ、俺でもバリバリに泳げるようになるのか?」
「当然よ。イルカやクジラのように泳げるようになると思うわ」
波間を滑らかに泳ぐ僕。最高だ。そりゃいいな。
「なんか魔道具に頼るというのは不本意だけど、泳げるようになるのはデカい。まあ、水着だって、水の中で抵抗になるものをおさえる効果とかがあるわけだし。それとあんまり変わんないだろ」
「なんか強引だけど、そんなに泳げるようになりたい訳ね。一応男性用の試作品もあるわ」
シルメイスがどこからか布きれを出す。あの形は多分ブーメランパンツだ。ん、けど、デメリットとかなんとか言ってたな。
「そう言えば、デメリットがあるって、どんなのだ」
まあ、アンが装着してるくらいだから大した事無いだろう。僕はシルメイスから水着を受け取る。
「どうしてもマナを詰め込み過ぎて、一定の衝撃を受けると爆発するのよ。まあ、ストーンゴーレムが爆散するくらいだからザップなら大した事ないわよね」
なんだとー! アン、そんな危険なもの装備して悠々と泳いでやがるのか。さすがメンタルもドラゴンだ。
「そんなのいるか! ボケェ!」
僕は水着を遠くに投げる。
チュドドーーーーーーーーン!
水着は爆発し天まで届くような水柱が上がる。あんなん装備してたら下半身ぶっ飛ぶわ。
コイツらバカなのか?
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