臨海都市シートル
「マイ姉様、泳ぎましょう」
アンがビーチチェアから降りて駆けてくる。その意外に凹凸がある体には水色のワンピースタイプの水着を纏っている。ヒラヒラ多めで見た目は可愛らしいアンにとっても似合っている。
「うん、ザップ、ありがとう」
僕はマイの手を離すと背を向ける。
「まずは着替えなよ」
僕もマイも収納の中の服と交換する事で早着替え出来るし、何も見えたりはしないんだけど、一瞬といえども女子の着替えを見るのは躊躇われる。衣裳チェンジをマイは失敗したのを見た事は無いけど、僕は結構少し位置がずれたりするもんな。
「もういいわよ」
振り返るとマイはビキニ。白でブラジャーに肩紐がないとタイプだ。初めて見るやつだな。なんか、白い水着が光を跳ね返してキラキラしてるように見える。ヤバい、女神、女神がいる。マイってとってもスタイルいいんだよね。胸は程々に大きく、腰はくびれていて、手足も筋肉はついているけど、スラッとしている。おっと、ジロジロ見すぎてしまった。
「マイ、とっても似合ってるよ」
まずは、新しい服を見たら褒める。導師ジブルから教えて貰った事だ。
「ありがとう」
良かった、海に来て。へそくり殆ど移動ポータル代で無くなってしまったけど報われる。最高、最高だ。
マイの剥き出しの肩につい目がいってしまう。なんか肩紐が無いだけで活動的に見える。けど、あれって激しく動いたらずれるんじゃないだろうかって余計な心配をしてしまう。
「ザップ、ここはどこのビーチなの?」
「シートルの外側だよ」
「ああ、道理で貸し切りな訳ね」
今の季節、綺麗なビーチはどこ行っても芋洗い状態だ。前に僕が作った王国のビーチは特にひどい。
僕らが立ってるのは、東方諸国連合の都市国家群の一つ、『臨海都市シートルの』南西にあるビーチだ。『臨海都市シートル』は、ビーチに面している都市で岬に囲まれた内海にある。その内海には岬と浅瀬に囲まれてるお陰で滅多に海の魔物は出ないのだけど、岬の外側の海は魔物がウヨウヨしている。特にこのビーチには巨大な奴がのべつまくなしやってくる。だから、ここらには地元の人々も観光客も殆ど立ち寄らない。
けど、それがいい。水遊びを楽しみながら、巨大海鮮を食べたり、素材が高く売れる魔物を討伐したりする事が出来る。
「ザップも着替えなよ」
「ああ」
僕も収納衣裳チェンジする。今年は花柄のトランクスだ。大きく南国の花が描かれているカラフルなやつだ。
「行くぞ!」
僕らは走って行って海にダイブする。少しマイの水着が心配だ。そして、海の中で足をつく。
「最高の水浴びね」
「そうだな。これで汗も泥ともおさらばだ」
僕らは海から上がろうとする。
「ザップ! ザップ!」
「ご主人様」
マイが僕から目を逸らし、アンは僕の下半身を凝視している。ん、穿いてない? 海を見るとプカプカ浮かんでいる僕のトランクス。あ、あれ、水着じゃねーや。同じ柄のトランクスだ。間違えた……




