彼女の名前はラパン・グロー
「トルネード!」
混濁していく意識の中にジブルの声が響く。
何とか持ちこたえると、僕はミケもろとも吹っ飛ばされる。剣が首筋に擦り、その痛みで少し意識がはっきりする。
ジブルを中心に風が吹き荒れて、黒鎧たちを吹っ飛ばした。風が落ち着き、ジブルが僕の方に駆けより、抱きついてくる。
「巻き込んでごめんなさい。ザップ!ここから遠くでなじみのある所を強く思いうかべて!」
ジブルが早口でまくしたてる。もう駄目だ意識を保てない。
「未完成だけど、うまくいって、空間転移」
ジブルの体から暖かい何かが流れ込んでくる。
「魔力が足りない……私の全てよ魔力に変わって!」
僕達を強い光が包み込む。
「ザップ、ラファ姫様を頼みます……」
回りの景色が溶けていく中、ジブルの声だけが僕に届いた……
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「ラパンちゃーん、お酒ーっ!」
冒険者のギムリさんが手を上げている。僕はカウンターでエールをついで、ギムリさんの所に持っていく。
赤い光が店内に差し込みもうじき日が暮れそうだ。
「ありがとう、ラパンちゃん。今日も可愛いね!」
「ありがとうギムリさん」
僕はギムリさんに頭を下げる。多分服が可愛いからだと思う。僕の服装は最近王都で流行っている黒と白でフリフリのたくさんついたメイド服ってやつだ。
「ギムリさん、うちの娘を口説いちゃだめですよ。まだまだ子供なんですから」
マリアさんが僕とギムリさんの間に割って入る。マリアさんはこの店の女主人だ。行き倒れてた僕を拾ってくれた恩人だ。
ここは、『みみずくの横這い亭』。お昼はレストラン兼カフェで、夜はバーになる。まだ未成年だと思われる僕が働けるのは日が沈むまでの間だけだ。
僕の名前はラパン・グロー。けど多分本当の名前じゃない。僕にはここに来るまでの記憶が全く無いのだ。
僕を見つけたマリアさんが、名前を聞いたところ、記憶にはないがラップと答えたらしく、それはあんまりと言うことで、目が赤いのでラパンって名前をつけたそうだ。ラパンって、遠くの言葉でウサギさんの事らしい。
「ラパーン、料理を1番にだ!」
調理長のだみ声が響く。
「はーい!」
僕はデシャップという作った料理を置く所にでた料理を両手に1つづつ持って1番のテーブルに運ぶ。かなりの大皿だけど、僕にかかれば紙切れと一緒だ。僕の自慢は力持ちな事だ。大人の男性よりも力があるんじゃないかと思う。
仕事が終わって、僕は自分の部屋に戻る。戻ってもする事がないので、仕事着のメイド服から私服に着替える。
壁には汚い皮のようなものがかけてある。マリアさんが僕を見つけた時の格好は、この汚い皮を体に巻いてて、金色のパンツを穿いてたそうだ。汚い皮は捨てようかと思ったけど、僕の身元を調べる時に役立つかもと思ってとっている。
ちなみに金色のパンツは恥ずかしいけど今も穿いている。これを穿いてるとなんか力が出るよな気がするからだ。
「ラパーン、ちょっと手伝ってー」
マリアさんの声がする。
「はーい」
僕は呼ばれた方に走って行った。
第二部のもう1人の主人公、僕っ娘ラパン・グロー登場です。グローはラパンがグッドフェローって言葉を思い出せなかったからです。痩せてて、銀髪で赤い目。某綾○レイを幼くしたような感じの美少女さんです。ラパンちゃんを今後ともよろしくお願いします。