姫と筋肉 討伐依頼 終
ガシャン!
最前列のゴブリンが僕に向かって構える。
ヒュン。ヒュン。ヒュン。ヒュン。
後列のゴブリンから矢が射かけられる。それをなんとかかわした所にゴブリン前列が突貫してくる。個々のゴブリンの攻撃は対した事ないのだけど、よく訓練されていて、攻撃をかわすと矢を射かけられて、それをかわすとまた攻撃。天井が低くて動きにくい事も相まって、全く反撃出来ない。しかも上手く退路も断たれている。呼吸を整える間が無いので、魔法系を使う余裕がない。かなり練度が高い。マジでゴブリンなのか? 自分にも被害があるけど、殲滅系の魔法を練り上げるしかないか?
「グギョッ!」
来た道の方からゴブリンの叫び声がする。なんか嫌な予感がする。
「加勢するぞ、ラーパーン!」
僕を攻撃していたゴブリンたちが後退る。そしてビタビタ音を立てながらやって来たのはレリーフ。両手をついての四足歩行だ。動物かよ。
「待たせてすまん」
「待ってない」
「加勢するぞ!」
「いや、いい」
「しょうが無いな。行くぞ!」
「話を聞け!」
相変わらず全く話を聞かず、ゴブリンたちに突っ込んでいくレリーフ。レリーフの腕は長いが、四つんばいでの攻撃なので精細を欠いている。殴ろうとするが、スカりまくる。そのスカった所をゴブリンたちがチクチク攻撃している。
「猪口才な。だが、お前らの攻撃など私の筋肉の前には無意味だ!」
ゴブリンの攻撃は全く効いてない。相変わらずどういう筋肉してやがるんだ。文字通り鋼の筋肉だな。
「グッ! そこはダメだ。そこには筋肉はついてない!」
ん、ダメってどこやられたんだ? 筋肉ついてないとこと言えば……
「クソッ。下品な奴らだな。お前ら如き、馬で十分だ! 出でよ馬!」
ん、馬? 確かあいつが馬と呼んで乗ってたのは?
僕の頭に思い浮かんだのはドラゴンゾンビ。確かこの馬鹿は白骨化したドラゴンゾンビに嬉々として騎乗してたような。
「馬鹿かっ! そんなの呼んだら押し潰されるぞ」
「そんなの知るか! もう遅い!」
地面一杯に描かれる魔方陣。
「グギョッ!」
「グギャ、ギャッ!」
禍々しい気配に逃げ出すゴブリン。当然僕も逃げる。やっぱり最大の敵はアイツだ。
「ハッハー! 馬よ奴らを食い尽くせ! ふごっ!」
あ、レリーフ、馬にやられたな。けど、振り返る余裕は無い。あと少し、あと少しで出口!
「きゃあ」
足下からせり上がって来た何かに持ち上げられる。そのまま天井に押し付けられる。動けない。レリーフ、コロス!
「ハッハー! 私にかかればゴブリンなどものの数じゃない」
ゲシッ!
腹が立ったのでレリーフの頭を蹴ってやる。まだレリーフは四つんばい。蹴りやすい。
「おいっ。女の子がはしたない。パンツ見えるぞ」
「知るかそんなの!」
レリーフが召喚をといた時には、僕の服は骨でズタズタだった。おきにの服だったのに、唯一のパンツだったのに。だから今はいつものワンピースだ。当然ゴブリンは全滅。今、収納に入れ終わったとこだ。
「おいっ、もう二度とお前とは組まない。死ぬかと思った」
「けど、死んでないだろ。私は全く問題ないぞ。やはりお前は筋肉が足りないんじゃないか?」
「知るか!」
僕はレリーフに背をむける。
後ろから金のブーメランパンツで四つんばいの変態が追っかけてくる。マジ怖い。
それからなんとか無事に街に戻ってギルドで換金した。ゴブリン討伐だけだったら赤字だったけど、奴らの武器防具は良いもので僕らの服を買ってもそこそこの金額になった。
「ほらよ」
洋服屋を出たとこで、お金の半分を渡す。
「なんだ?」
「報酬だよ」
「いらん」
「おいおい、殆どお前が倒しただろ。貸し借りは嫌だとっとけ」
「そうか、なら貰っとく。またいつでも誘ってくれ。じゃあな」
レリーフは手を上げて僕に背を向ける。誘ってくれじゃねーよ。今まで1回も誘った事ねーよ。これがレリーフとの最後の冒険になる事を祈る。
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