さようならザップ
「マイ……アン……ラファ……」
僕は訳が解らず力が抜けその場に崩れ落ちる。つるつるとした床が冷たい。
そう言えばまた服を失ったのだった。けど、パンツは穿いてる。
金色のパンツ?
確かラファに貸したよな?
立ち上がって収納からミノタウロスの腰巻きを出していつも通りに腰と首に巻く。何故かぶかぶかだ。
その時異様な物が目に付く。
僕の胸が膨らんでいる?
つい両手で掴んでしまう。
本物だ!
頭も触る。2房の纏められた髪の毛が……
金のパンツの耐性のお陰で、髪の毛は失わずにすんだみたいだ。北の魔王リナもそうだったしな。
それよりも、何が起こったんだ?
「ジブル、どういう事だ?」
僕の口からは聴いた事の無い高い声が出た。なんかジブルに聞かなくてもぼんやりと何が起こったかわかりかけているけど。原因が解らないので確認したい。
「ラファ様が、魔法でザップと体を交換したみたいです」
信じられない事だが、結果からするとそうとしか思えない。
ジブルが簡単にここでラファの名前を出したから、辺りを見渡すが、人っ子1人いない。
「ラファはなんでそんな事を……」
「多分、ザップを助けるにはラファ様にはそれしか方法がなかったのでは、私は何も出来なかったですし……」
ジブルは目を伏せる。そう言えば、僕の目線は今はほぼジブルと一緒だ。
「クソッ、油断した。ということは、ラファは僕の体で串刺しで石になってるって事か。早く助けて体を元に戻さないと」
「別にこのままでいいんじゃないですか?中身が違ってもラファ様はラファ様。アウフに戻りましょう」
「ヒャッ」
首筋に冷たいものがあたる。騎士ミケが抜いた剣を僕の首筋にあてている。もう片方の手で僕を後ろから抱きしめる。
「ミケ、何しやがる!」
「動かないで下さい。手元が狂うかもしれないですから」
ミケの声には抑揚が無い。精神魔法か?
「妖精、こいつの首を落としたく無ければ、妖精族に伝わる忘却の魔法をかけろ」
低い声が響き、目の前の扉を開けてアカエル大公が現れる。悪趣味な鎧ではなく、礼服を着ている。こいつは迷宮の中にいるはずでは?
「嫌よ、なんでそんな事しないといけないの?」
音もせず入ってきた黒鎧の騎士達が僕らを囲む。
「安心しろ、そうすればお前達に危害は加えない。姫には私の妃になってもらう。今までの事を忘れた方が幸せになれるのではないか?」
抵抗するが、ミケの力は強くびくともしない。
「わかったわ……約束は守るのよ」
「駄目よ、止めなさいミネア!」
ジブルが叫ぶが、彼女は黒鎧に羽交い締めにされる。
僕の頭の所に飛んできた妖精が呪文を唱え、僕の頭に光の粉を振りかける。
「止めろ!ミネア!」
抵抗するが、拘束具に捉えられたかのようで動けない。
「ごめんね、さようなら、ザップ……」
妖精は僕の目をじっと見つめる。
「忘却……」
妖精の言葉を契機に、僕の頭の中に白いもやがかかっていった。
ここから急展開ですが、最終的にはハッピーエンドになる予定です。まだまだお付き合いよろしくお願いします。
みやびからのお願いです。
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