始まり汁
「もう、このスライム汁ともお別れか」
僕はしみじみと美味しくないここの名物、『始まり汁』とも呼ばれている、スライム汁飲む。なんか『始まり汁』ってなんかエッチな響きがあると思うのは僕だけだろうか? それとも僕の心が汚れてるのだろうか? それより、中の肉が何なのか分からずじまいだったな。ま、いっか。
カプと別れて迷宮を出て、まずは食堂で腹ごしらえする事にした。そしてみんなで仲良く『始まり汁』を飲んで寛いでいる。お気に召さないのか、マイが眉間にシワを寄せながら口を開く。
「こんなものとっとと別れていいんじゃない? 気に入ったなら野生のスライム捕まえて作るけど」
「分かって無いな。ここで飲むからいいんだよ。なんか観光地に行ったりした時、そこの名物料理あったら食べるだろ。それで美味かったためしはない。けど、やっぱ観光って楽しいからその時の事は覚えてるだろ。そんな感じだ」
始まりの街の始まり汁。これって意外に良い商売になるんじゃないだろうか?
アンがズズーッと3杯目のスライム汁を飲み干す。相変わらずよく食べよく飲むな。
「こんなものが主食になってるのは世界広しといえどもここだけじゃ無いですか? 美味しくないですし。それに、この私ですら、スライムを食するのは始めてでした。そもそも、こんなに大量のスライム汁を集められるのはここだけなんじゃないですか? あ、お姉さん汁もう一杯追加で」
アン、まだ飲むのか。美味しくないって言ってるわりに、結構気に入ってるんじゃないか?
腕を組んで考えて事をしてたピオンが口を開く。
「ずっと疑問に思ってた。カプルソーはここら辺のマナを吸って迷宮を掘ってる。ここの上はメダリオン。たくさんの人がいる。なのに封印が解けてないっていうのはおかしい?」
うん、そりゃそうだな。僕ら4人のマナより絶対にメダリオンの人達のマナの方が多いはず。
「多分、結界じゃないの?」
マイも腕を組んで考えてる。
「多分、昔はここ麦畑だって言ってたじゃない。だから、強い人に迷宮をチラつかせて囲ってたんだと思うけど、多分それが囲う変わりに外からマナが入るのを遮ってるんじゃない? だから、その一方通行の結界を解いたら、多分10年と言わずすぐに封印解けるんじゃないの?」
マイの仮説だけど、なんかそんな気がする。けど、カプが解放されても誰の得にもならないだろう。
「ザップ、あたしの始まり汁飲まない?」
「ゲホ、ゲホッ」
マイの言葉につい飲んでる汁を噴き出しそうになる。
「どうしたの? ザップ、大丈夫?」
「大丈夫だ……」
綺麗な心を持たないと……




