赤銅竜
「グゥオオオオオオオオオオオオオーーーーーーッ」
轟音と共に炎を口から吐くドラゴン。僕は前に出て右手を伸ばしそれを余す事無く収納に入れる。んー、あんま熱くないな。しかも肺活量少なすぎだろ。もう終わりかよ。アンのブレスより一回り劣るな。これじゃゴブリンは一撃でやれてもオークは難しそうだな。トロールは無理だ。
問答無用で襲いかかってきたからには敵。僕はハンマーを両手で握り右後方に引き絞りながら一直線に駆ける。そしてあいさつ代わりにドラゴンの前足を薙ぐ。
ガキン!
硬質な音に弾かれる。おかしい。まるで固くて分厚い壁を殴ったかのように、全く打撃が通った感が無い。黄金竜でさえ少しは感触があったのに。
と、思った時には僕はぶっ飛ばされていた。何だ? 体中が痛い。何が全身に刺さっている。赤銅色の破片みたいなのが体に刺さっている。収納からエリクサーを出してかぶるが、刺さってるとこは治癒しない。
ドドドドドドッ!
ドラゴンが巨体を震わせながら迫り来る。
「ザーップ!」
駆けて来たマイの差し出した手を掴む。ギリギリのところでドラゴンをかわし、僕とマイは地面を転がる。立ち上がったマイに手を引かれて立ち上がる。マイは僕に刺さった破片をガツガツ抜いてくれる。僕も破片を抜く。痛ぇ。腹を貫通して頭が飛び出してる破片を抜く。当然エリクサーは浴びている。
「何が起こった」
駆け抜けた竜から目を離さず聞く。
「ザップが叩いた瞬間、刺が一つ弾けたように見えたわ」
「なんだそりゃ? もしかしてスキルかなんかなのか?」
「ご主人様ーーーーっ!」
アンがこっちに走って来る。
「思い出しました。カプルソーです。あれはカプルソーです」
「だからなんなんだよ。そのカリプソーって?」
「ザップ、カプルソーよ。カリプソは音楽よ、なんかポコポコしてて楽しそうな」
さすがマイ。いつでもツッコんでくれる。けどボケた訳じゃない。
「だからカリプソーだろ」
「ちがうってカプルソーよ」
「だから、カリプソーだろ」
「だからカリプソーだって」
「ほら、マイもカリプソーって言った。もう覚えやすいし言いやすいからカリプソーでいいじゃないか」
なんかこっちを向いたドラゴンは体をブルブルと震わせている。そして、その体がみるみる縮んだと思うと、体を隠した裸の少女。少女を赤い霧みたいなものが包んだと思ったら、赤髪に赤いワンピースの少女が立っていた。
「カリプソーじゃない! カプルソーだ。そんな踊り出したくなりたくなりそうな名前じゃないやい!」
少女は叫ぶ。よし、計算通りだ。ドラゴン形態では話が出来ないから化けたんだろう。これで交渉できるな。
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