進軍
「き、キングスライムが一撃……」
アンの右手が巨大なキングスライムに炸裂する。
ミケが口を開けて驚いている。地下10層のフロアボスキングスライム撃破。
「オークキングが一撃……」
僕のハンマーがオークキングを挽き肉に変える。
ジブルも口を開けて驚いている。地下20層のフロアボスのオークキング撃破!
「ボストロルが一撃……」
マイの斧が地下30層のフロアボスのボストロルの首を刈る。もはやジブルもミケも諦めてるみたいだ。驚かなくなってきた。いいことなのか?
ジブルの地図はここまでしかない。フロアボスの部屋にはワープポータルがあるので、次は楽に来れる。
ラファ達のレベリングは諦めて、僕がミケ、マイがジブル、アンがラファを背負ってここまで駆け抜けた。雑魚どもはみんなキックや踏みつけで文字通り蹴散らしてきた。ドロップアイテムの回収は妖精ミネアの仕事だ。
僕達はそのまま破竹の勢いで進軍する。方向感覚の1番優れたマイを先頭に難なく地下40層までたどり着く。フロアボスはキングミノタウロスだ。
「瞬殺!」
僕のハンマーがキングミノタウロスを吹っ飛ばした。
まだまだ快進撃は続き、ついには地下50層。そろそろ強い奴が出て来るかもしれないので、ボス部屋の前で、軽く休憩した。ここをクリアしたら地上に帰ろうと思う。
「じゃ行こうか」
しばらく座って呼吸も整ったので、扉を開くと奥が見えない様な大部屋だった。
武器を構え僕は駆け出す。それに全員続く。
薄暗い部屋の奥に巨大な黒い影が。見上げると赤く輝く双眸。真っ黒な鱗に覆われたドラゴン。ダークドラゴンか?
「ご主人様、あれは闇に堕ちたドラゴン。私達の宿敵。私に任せて下さい!」
アンが僕の隣で声を張る。アンからビリビリするような殺気が溢れる。いかん、冷静じゃないな。
「いや、お前達が暴れたら、ラファ達が危ない。俺に任せろ。下がっとくんだ」
僕はハンマー片手にドラゴンに駆けよる。
「グオオオオオオオオーン」
ドラゴンが天を仰ぎ咆哮を上げる。いかん威圧効果のあるやつだ。
「耳を塞げ!」
「大丈夫!マインドシールドをかけたわ」
妖精の声がする。何の魔法かは解らないが、精神防御のやつだろう。
「一発で決める!」
僕は跳びハンマーを両手に握りすべての力を込めて振り下ろす。
ドゴッ!
「ギャアアアアッ」
苦痛に思わず叫んでしまった。何が、何が起こった?お腹が熱い。地上から生えた巨大な岩の槍が僕の腹に刺さり、背中まで貫通していた……