限定迷宮 23
「よし、行くぞ」
地獄の門の前に立つ。今は僕たちだけしかいない。今度は並ばずに来れた。そう言えば、迷宮の形が変わるのは1日1回って言ってたな。地下一層は16種類。その内の一つはさっきの必殺大部屋モンスターハウスな訳で、さすがにもう一回あれに当たったりはしないよな。
「もう、モンスターハウスだけはやだ」
ピオンが呟く。それって強めのフラグじゃ無いのか?
「そうね。16分の1なんでしょ。さすがに同じとこは引かないでしょ」
マイの顔色は戻ってる。ネガティブだけどつい頭に思い浮かんだ事を口にする。
「けど、16種類の地下一層のエリアの中にモンスターハウスが一つとは限らないんじゃないのか?」
マイの顔が若干曇る。
「たしかにあり得るわね。まあ、それでもさすがに次は引かないでしょ。引かないで欲しいわ。どれを引くかって、多分最初に入った人が抽選してるんじゃないのかな。ここは運が一番強いザップが最初に入るべきじゃない?」
「いや、俺は運の悪さは多分この中で一番だろう。それにモンスターハウスは外れじゃなくて当たりなんじゃないか? 普段の俺たちだったら嬉しいもんな」
だいたいモンスターハウスではなんかお宝が出る。いつもの僕なら引いたらホクホクだ。今日は稼いだお金で贅沢して何食べようってなるもんな。
「そうよねー。じゃ、恨みっこ無しって事で、みんなで一斉に入りましょう」
なんかおバカっぽいなと思いながらも僕らは開いた地獄の門の入り口に横一列に並ぶ。
「行くわよ。せーの」
みんなで一斉に足を踏み出す。迷宮に入る。あ、目の前に見えてる通路が霧が晴れるかのように消え去る。大部屋、うん、大部屋だ。いっぱいいるねスライム。少し先にダガー、袋っぽいものが落ちてる配置も変わらない。うん、紛う事無くさっきのモンスターハウスだ……
「まじか……無理ね。死にましょう」
マイがテンション低めの声を出す。
「また窒息なんですね。あれ辛いです」
アンはその場に座り込む。
「舌でも噛んで死のう」
ピオンは自殺が好きなのか? 当然だけどみんなテンションだだ下がりだな。たしかにさっきは物量にやられた。けど今度はさっきと違う。何故なら僕は駆け出している。スライムが動き出す前に。想定内だ。スライムを押して道を作り、ダガーに向かって頭からスライディングする。そして手を伸ばし刃なのか柄なのか気にせず掴む。
やった!
手に刃が食い込んだけど、気にせず掴んだダガーを放る。ピオンに向けて。僕に動き出したスライムが近づいてくる。
「ピオン。俺を囲んだ奴らをやっつけろ」
ピオンは弾かれたかのように動き始めると僕に群がるスライムを切りつけ始める。次のターゲットは少し先に木の棒が落ちてる。あれを手に入れて2人戦えるようになると世界が変わる。スライムと互角に戦えるはずだ。
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