石人使いの大公
「とおーっ!」
ゴウッ!
ラファがハンマーで、スライムを叩き慣れてきたのか威力が増している。明らかにもはやオーバーキルだ。
「ふぅーっ」
もう一匹に炎の息を吐きかける。軽く蒸発する。これもオーバーキルだな。後で注意しよう。
後の残りのスライムをミケとジブルが武器で倒す。こいつら近接戦闘ではラファにぶっちぎられてるな。どっちが守られてるのかわからない。
僕らは今は地下三層の広めな部屋。スライムをラファ達に狩らせながら進んでいる。
ん、なんか人の気配が。
「ザップ!囲まれたわ」
マイが斧を構える。
「ストーンシャワー……」
何処からか低い男の声がする。
僕達の上に多数の何かが出現する。岩?
「マイはジブル、アンはミケをっ!」
僕は叫んでラファに向かって走る。
「キャア!」
ラファからハンマーを奪い上から押さえてしゃがませる。
上空から岩がドゴドゴ落ちてくる。それをことごとくハンマーで叩き潰す。敵が不明で多分人なので、まだ収納は隠し球にする。
しばらくして、岩石の落下は止まった。
「マイ、アン、大丈夫か?」
「大丈夫よ」
「大丈夫ですよ」
「ねぇ、ザップ、あたしは?」
妖精の声がする。こいつは岩に潰される玉ではないが、一応女の子だしな。
「ミネア大丈夫か?」
「大丈夫!大丈夫っ!」
嬉しそうに妖精が答える。
僕達の回りは大小の岩が転がっている。マイとアンも僕と同じ様な方法をとったみたいだ。妖精は小さい羽根妖精に戻っている。
「それで、何のつもりだ」
魔法の術者がいると思われる方に問いかける。
闇の中から背の高い男が現れる。いつの間にか僕らの回りには所々に闇の塊がある。
「「アカエル大公!」」
ミケとジブルが同時に叫ぶ。
大公?大公って偉い人だよな。低い声に似合わず、少し面長でサラサラ金髪の女性と言っても通じそうな線の細いイケメンだ。
けど、目の前の人物は怪しい人間というよりも、いってしまった人間にしか見えない。
漆黒のマントに骸骨をモチーフにした鎧。とどめになんかの動物の頭骨を頭の上に乗せている。絶対に街を歩けない格好だ。多分、迷宮の出入りの度に着替えるんだろうな。
「導師ジブル、挨拶代わりだ。お前達の雇った者の力を試させて貰う」
何て迷惑な挨拶だ。しかもまだやる気なのか……
大公が出て来た以外の闇の中から、黒塗りの鎧の騎士達が現れる。
「まて、お前達、彼らにはこれと戦って貰う。石人創造」
ゴゴゴゴゴッ
僕達の回りの岩が集まり無数の巨大な人型を形作る。
「お前達の力を」
ゴツゴツゴツゴツゴツゴツゴツ!
「見せてみろ?ヘッ?」
大公さんは目を見開いて愉快な声を漏らされる。
口上の途中で僕達はゴーレムをすべて土に返してやった。