限定迷宮 4
「町だな」
「町ね」
僕とマイはうなずき合う。物資を補給出来るとこはあるんだろうとは思ってたけど、さすがに町は驚きだ。『原始の迷宮』を思い出すな。忍者とドラゴンは警戒心なくそこらの建物を覗き込んでる。まあ、見たとこ小綺麗な町だから、危険は無いだろう。
通路の先はドーム状の大部屋で謎に明るい。昼間みたいだ。けど、天井は岩だ。そこに所狭しと雑多な建物が並んでいる。西方風、東方風、なんかメダリオンの町を連想する。その建物にはベッドの絵の看板や武器や防具の絵の看板などがデカデカと掲げてあり、なんの建物か丸わかりだ。好奇心でうろついてるアンとピオンは置いといて、僕は頭でっかちの人間がドラゴン向かって剣を掲げている絵がついた看板の建物に向かう。多分、絵の意味は魔物討伐。という事は冒険者ギルド的なものなんじゃないだろうか? ざわついてる建物に向かう僕にマイもついてくる。
「らっしゃい。新入りかい」
スイングドアから入ると、バーカウンターでグラスを磨いているちょび髭のオッサンが声をかけてくる。
「ここは何だ?」
「見ての通りの酒場だ。仕事も斡旋している」
ごちゃごちゃした店内には10無いくらいのテーブルがあり、思い思いの格好をした人達が座っている。突っ伏して酒を飲んでる者、口角泡を飛ばして言い争ってる者、カードゲームに興じてる者。酒場兼冒険者ギルドって言ったところか? 僕は少し身構える。ゴツい男が多い。今の弱体化した僕では揉め事になってマイを守り切る自信がない。
「そう、緊張しなさんなってよ」
近くのテーブルに居たひげ面の小っこいオッサンが声をかけてくる。ドワーフだ。丸一日兜の天辺に真っ直ぐ伸びた鉄の角が生えてる。1本角の兜ってあんまり見ないな。クソだっせーな。
「おれっちはミゲルっつーんだ。兄さんたち新顔だな。安心しな、おめーらだけじゃなく、俺らも弱いからな」
このオッサンが弱い? めっちゃ筋骨隆々なのに?
「はん、その顔はまだ知らねーみてーだな」
ミゲルのオッサンが鼻を鳴らす。
「ここは『振り出しの迷宮』の『振り出しの町』みんな、レベル最低、スキル0のクソザコしかいねーよ」
僕たちの会話に気を留める者もなく、辺りは喧噪につつまれている。
「兄さんたち金は持ってきたか?」
バーテンが声をかけて来る。うう、お金は全部収納の中だ。
「少しはあるわ」
マイはお金持ってるのか?
「良かったな、文無しじゃなくて。だが、ここじゃ働かねーとすぐ金が無くなるぜ。あっちに仕事がある。見ていきな」
バーテンは顎で奥を指す。掲示板。やっぱギルドのようなものか。
「その前に、ここはなんなのか誰か教えてくれないのか?」
「好きな事聞けばいい。1つの質問で銀貨一枚だ」
何、そりゃ高いだろ。
「『振り出しの迷宮』ってなんなの?」
マイは躊躇う事無く銀貨をバーテンに放る。それを磨いているグラスから目を離さずバーテンは掴む。
「迷宮から戻る度に強さが振り出しに戻る。しかも毎日形が変わる。クソのような迷宮だ。以上だ」
「ありがとう。色々調べた方が良さそうね。ザップとりあえず座ろっか」
「ああ」
イマイチ状況が掴めないが、僕とマイは空いてるテーブルにつく。
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